私たちは、常に評価の目に晒されて暮らしています。「いいね!」という言葉にも、「おまえを評価してやる」という意味が含まれています。人間関係が希薄になる中で、裁きの目を浴びている。今、あなたに必要なのは、あなた自身を全力で肯定する言葉です。私はコミュニケーション・コンサルタントとして、小学生から政治家までを「言葉の力」で応援してきました。現場で培ったノウハウで、エールを送りたい。あなたを、丸ごと、全力で肯定します。
【第4回】「コスパの悪い人間です。」
私たちは、常に評価の目に晒されて暮らしています。「いいね!」という言葉にも、「おまえを評価してやる」という意味が含まれています。人間関係が希薄になる中で、裁きの目を浴びている。今、あなたに必要なのは、あなた自身を全力で肯定する言葉です。私はコミュニケーション・コンサルタントとして、小学生から政治家までを「言葉の力」で応援してきました。現場で培ったノウハウで、エールを送りたい。あなたを、丸ごと、全力で肯定します。
一生懸命やっているつもりなのに結果がともないません。適当にヘラヘラしている同僚のほうが評価されているように感じます。評価が下がればお給料も上がらないし、仕事のモチベーションも下がります。低コストでハイリターンを手に入れる器用さを身につけたいです。
(餅兵衛 35歳)
餅兵衛さん、メッセージ、ありがとうございます。
長く会社で働いていて、つくづく思うのは、実力と出世はけっして正比例の関係にないことです。
力は、Aさんの方がある。
しかし、上司とゴルフ仲間だったり、よく飲みにいっているBさんが出世している。
明らかにCさんが仕事を仕切り、人望もあるのに、たまたま小さなミスをしたときが昇進のタイミングだった。
結局、何もせず無難に過ごしているDさんが上に上がっていった。
こんな話が社内外に溢れていました。
評価は、しょせん人間がやるもの。
客観的公平性なんてものはあってないようなもの、というのが実情です。
35歳の餅兵衛さんが、「なんであいつの方が評価されるんだ?」と思う気持ち、よくわかります。
世の中、理不尽ですよね。
楽に見える仕事ほど、舞台裏はきつい
だから、低コストでハイリターンな仕事を身につけたい。
そう考えたくもなりますよね。
ネットをひらけば、YouTuberが楽しそうにしゃべるだけで、年収のような月収をもらっている。
セミナーやコミュニティに参加すれば、「あなたの夢は必ず実現する!」とメンターや講師が力こぶしを握っている。
金融に詳しい友人が巨額の富を得ていたり、仲間同士で気楽な会社を作ったら大儲け!なんて話もあちこちで聞く。
上司の顔色をうかがい、同僚に嫉妬しながら暮らすよりも、あきらかにやりがいがある。
コスパも良さそうです。
「こんなところに埋もれて、無駄に時間を過ごしていていいのか?」
と焦る餅兵衛さんの気持ちを多くの方ももっているのではないでしょうか。
転職に至ったきっかけに多いのは「キャリアアップ」よりも、「こんな場所で無駄に時間を費やしたくない」という焦りの気持ちの方が多いのが実態です。
35歳の餅兵衛さんが焦燥感に駆られるのも無理はないでしょう。
しかし、コスパがよくて楽そうに見える仕事は、意外に大変なものです。
私自身、好きなことを文章に書き、発言する講師業をしています。
「お前はいいよな。好きな仕事ができて」と友人、知人に言われます。
が、舞台裏は大変です。
毎晩、「明日はもうネタがなくなるんじゃないか」「そろそろマンネリかもしれない」「今日は、みんなの反応が悪かったな」とクヨクヨと悩んでばかりいます。
人の書いた本の出来がいいと、すぐに妬む。
「運がよかっただけだ」と相手を落として溜飲を下げる。
実に小さな人間だと、自己嫌悪。
炎上も経験しました。
世界中を敵に回したような日々が何日も続き、海底へと沈んでいくような気分を味わいました。
楽に見える仕事ほど、舞台裏は結構きついのです。
モチベーションを数値化する
さて、そんな餅兵衛さんにアドバイスです。
これは、私の教える大学の学生から聞いた“モチベーションを上げていく方法”です。
ある日、彼女がこう言いました。
「昨日は、モチベ(=モチベーション)10%だったけれど、今日は、雨でキャンパスがきれいに見えたので、モチベが12%に上がった」
不思議な言い方をする子だなぁと思って、尋ねてみました。
実は彼女は、中学生の頃に重い病気を患って2ヶ月半、入院したことがあったそうです。
お腹に激痛が走る病気で、苦しんでいた。
その時、看護師さんが、
「痛みを、10とすると、今はどれくらいですか」
と聞いてきたそうです。
彼女は、ある時は、7、ある時は8と答えた。
自分の痛みを冷静に観察し、「昨日の痛みよりはましかもしれない」と考えて、数値を割り出していったそうです。
「この時に学びました。気分やモチベーションは、『低い』『下がってる』『最低』みたいにざっくりと考えるのではなく、細かく数値化してみる。道端にきれいな花が咲いていたから、モチベ4%アップ!なんて考える。そうやって自分を細かく観察することで、気持ちの落ち込みを克服していきました」
私も病気にかかった時、看護師さんから同じように痛みを数値で聞かれたことがあります。
あれは身体の痛みの数値化でしたが、心や気分にも応用できる。
「今日は、得意先との交渉がサクサク進んだので、モチベ47%」
「今日は、昼ごはんのお弁当を並ばずに買えたので、モチベ5%アップ!」
みたいに考える。
自分の心の変化を客観的に数値化することで、自分がどんなときに心がときめくのか、何に気分を害するのかが見えてくるようになる。
「ヘラヘラしているやつの態度」も数値で客観視すれば、自分の長い人生にさほど影響のない小さな人間だとわかってきたりするものです。
餅兵衛さんの抱える理不尽な気持ちや将来への不安にお答えできたかどうか不安ではありますが、これを読んで1%でも、餅兵衛さんのモチベが上がってくれたら嬉しいです。
日々のモチベに変化があったら、またメッセージをください。
明日の餅兵衛さんの、モチベが向上していることを祈っています。
餅兵衛さん、ありがとう。
ひきたよしあき
(イラスト 江夏潤一)
連載一覧
- 第1回 あなたを全力で肯定する理由
- 第2回 私は自己肯定感が低いです。
- 第3回 コミュ障です。
- 第4回 コスパの悪い人間です。
- 第5回 ダメ上司です。
- 第6回 本気で人を好きになれません。
- 第7回 夢がありません。
- 第8回 若い子には勝てません。
- 第9回 社畜です。
- 第10回 不寛容な人間です。
- 第11回 老害でしょうか。
- 第12回 母親失格です。
- 第13回 モテない男です。
- 第14回 口下手です。
- 第15回 都合の良い女です。
- 第16回 ネガティブ思考です。
- 第17回 アピールポイントがありません。
- 第18回 妻に怒られてばかりです。
- 第19回 親を大切にできません。
- 第20回 自分、性格悪すぎです。
- 第21回 問題意識が強すぎて疲れます。
- 第22回 向上心がありません。
- 第23回 私は変わるべきなんでしょうか。