私たちは、常に評価の目に晒されて暮らしています。「いいね!」という言葉にも、「おまえを評価してやる」という意味が含まれています。人間関係が希薄になる中で、裁きの目を浴びている。今、あなたに必要なのは、あなた自身を全力で肯定する言葉です。私はコミュニケーション・コンサルタントとして、小学生から政治家までを「言葉の力」で応援してきました。現場で培ったノウハウで、エールを送りたい。あなたを、丸ごと、全力で肯定します。
【第6回】「本気で人を好きになれません。」
私たちは、常に評価の目に晒されて暮らしています。「いいね!」という言葉にも、「おまえを評価してやる」という意味が含まれています。人間関係が希薄になる中で、裁きの目を浴びている。今、あなたに必要なのは、あなた自身を全力で肯定する言葉です。私はコミュニケーション・コンサルタントとして、小学生から政治家までを「言葉の力」で応援してきました。現場で培ったノウハウで、エールを送りたい。あなたを、丸ごと、全力で肯定します。
これまで交際した人はいるけど、
本気で好きだったかと言われると、うまく答えられません。
「愛してる」とか言えません。
今後の人生でも、そういう相手が現れる気がしません。
「そのうち現れるよ」とか言われるのも飽きました。
私っておかしいんでしょうか?
(ユウキ 30歳)
ユウキさん、こんにちは。
メッセージをありがとう。
「愛してる」って、なかなか言えないよね。
小っ恥ずかしいし、どこか借り物の言葉みたいな感じがします。
夏目漱石が、「I Love You」の訳を聞かれ、
「月が綺麗ですね、とでも訳しておけ」
と言ったとか。
俗説とも言われているけれど、日本人には、こちらの方がぴたりと心情にはまる。
「愛してる」が言いにくいのは、ユウキさんだけじゃないよ。
腹の底、胸のうちから湧き上がる言葉と感じられないのが普通じゃないかな。
好きかどうかなんてわからない
問題は、「本気で好きだったか」と言われて、うまく答えられないところだね。
これは難問だ。しっかり考えていきましょう。
人のつきあいは、「3日、3ヶ月、3年」とよく言われます。
そのくらいで、飽きがくる。
「このままでいいのか?」と客観的に考える時期がくるんだ。
これは生き延びるために大切な本能とも言える。
間違った道に突き進むことを回避するためには、頭から水をかぶって、冷静になる時期は必要です。
はじめのうちは「かわいい」と思えたところが、「だらしない」と感じるようになったりする。
「しっかりしている」と尊敬していた部分が、「冷たい」と評価が変わる。
心の中のもうひとりの自分が、「本当にこの人で大丈夫?」と心配して冷や水を浴びせてくる。
そのたびに、「好き」は、どんどんと変化していく。
「あばたもエクボ」と気づくうち、「あばた」も気にならなくなる。
そのうち、顔や容姿のことなど、どうでもよくなってきます。
そう、「好き」って変化するものなんだよ。
肉感的にドキドキする回数が減る分、相手に対する「尊敬」が生まれてくる。
やがて、その「尊敬」すら失せて、ただそこにいるだけで心休まる空気のような「存在」になる。
「永遠の愛」なんてものはない。
その「愛」は、いつも変化し続けているのではないでしょうか。
ユウキさんの言う「本気で好き」という言葉。
これが出会った頃の初々しい「好き」を継続することだとしたら、そりゃ無理だと思うよ。
「本気で好き」というのは、日々刻々と変わっていく「好き」のかたちを受け入れたり、拒絶したりしながら続けるものだから。
「いつまでも変わらない愛」なんてのは、歌の世界にしか存在しないと考えた方がいい。
変わらないためには、変わり続けなくちゃいけないんだ。
「好き」を集める
さて、人生で「本当に好きと思える人」が現れるか問題です。
私は占い師ではないし、恋愛のコンサルタントでもありません。
ユウキさんの悩みに応える力はないのかもしれない。
でも、思うところを書いていきますね。
「この人は、私が愛するに値するか」「一生の伴侶になるか」なんて大上段から見下ろして、人を裁いていたら、きっと「本当に好きと思える人」は現れないと思います。
「好き」は一瞬一瞬に変化するもの。
だから、人を値踏みしている暇があったら、その人といっしょにいて、「うれしい」「たのしい」「ほっとする」「わくわくする」「勇気がでる」「自分をだせる」「自分を好きになれる」という自分の気持ちや、「おそばの食べ方が好き」「しょげているときの背中に声をかけたくなる」「起きたての顔にほっとする」とか、相手を見た時の感情を、しっかりと言葉にした方がいい。
自分に言い聞かせるんだ。
こうした感情の総体が「好き」ということ。
「好き」というマグネットに、小さな「好き」を吸い付けていきましょう。
やがてそれが、大事なものを慈しむ気持ちに変わる。
それが「愛」なんだと思うのです。
「縁」をつなぐ
もうひとつ大切なこと。
それは、「縁」。
「幸運な女神には前髪しかない」といいますが、「縁」も同じ。
タイミングを逃さず、パッとつかむものです。
重要なのは、この先です。
つかんだ「縁」を離さない。
タイミングよくつかんでも、スルッと抜けるのが「縁」。
つかんだことに満足せず、それを鷲掴みにし続ける。
風水で有名なDr.コパ先生は、こう言っていました。
「『運』って鉄棒と同じでね。飛びつけばいいというもんじゃない。
そのあと、ぶら下がり続けなければいけないんだ」
「縁」も同じです。
名刺を交換した、一度食事したことで終わりにせず、もう一歩踏み出して、メールを送る。
次に会う機会を設定する。
運には、鷲掴みにするタイミングと同時に、それを逃さない握力が必要なんです。
恋愛至上主義に陥らないこと
ここまで書いてきて、最後にユウキさんに伝えたいことがあります。
私は、離婚を経験しています。
若い頃のことですが、当時を振り返って反省することがあります。
それは、人は恋愛するのが当たり前で、恋愛していない状態は「何かが欠けているのかもしれない」と思い込んでいたこと。
人生の前半には、よくある思い込みです。
しかし、それは違います。
恋愛をしていてもしていなくても、ユウキさん、あなた自身は100%であって、欠けているところなどひとつもありません。
「恋愛至上主義」に陥らないこと。
「これが本当の愛」とか「この人が永遠のパートナー」なんて決め込まないで、「好き」のマグネットにたくさんの「好き」をくっつけたり、離したり、形を変えたりしながら、人間関係はできていくものだからね。
応援しています。
ユウキさん、ありがとうございました。
ひきたよしあき
(イラスト 江夏潤一)
連載一覧
- 第1回 あなたを全力で肯定する理由
- 第2回 私は自己肯定感が低いです。
- 第3回 コミュ障です。
- 第4回 コスパの悪い人間です。
- 第5回 ダメ上司です。
- 第6回 本気で人を好きになれません。
- 第7回 夢がありません。
- 第8回 若い子には勝てません。
- 第9回 社畜です。
- 第10回 不寛容な人間です。
- 第11回 老害でしょうか。
- 第12回 母親失格です。
- 第13回 モテない男です。
- 第14回 口下手です。
- 第15回 都合の良い女です。
- 第16回 ネガティブ思考です。
- 第17回 アピールポイントがありません。
- 第18回 妻に怒られてばかりです。
- 第19回 親を大切にできません。
- 第20回 自分、性格悪すぎです。
- 第21回 問題意識が強すぎて疲れます。
- 第22回 向上心がありません。
- 第23回 私は変わるべきなんでしょうか。