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あなたを全力で肯定する言葉【第14回】「口下手です。」|ひきたよしあき

2023年4月11日

私たちは、常に評価の目に晒されて暮らしています。「いいね!」という言葉にも、「おまえを評価してやる」という意味が含まれています。人間関係が希薄になる中で、裁きの目を浴びている。今、あなたに必要なのは、あなた自身を全力で肯定する言葉です。私はコミュニケーション・コンサルタントとして、小学生から政治家までを「言葉の力」で応援してきました。現場で培ったノウハウで、エールを送りたい。あなたを、丸ごと、全力で肯定します。

【第14回】「口下手です。」

口下手で、気持ちや意見を伝えるのが苦手です。ボキャブラリーに自信がないし、論理的な展開や、人を引き付ける表現ができません。会話が終わってから(たとえば帰宅後、お風呂に入っているとき)、「もっとああ言えばよかった」「的外れなことを言ってしまった」と一人反省会をするのが常です。仕事はもちろん、プライベートでも、自分から話したり、その場で意見を言ったりできないので、ひたすら聞き役に徹し(たフリをし)ています。これじゃよくありませんよね。
(ヒカリ 18歳)

 

ヒカリさん、メッセージありがとう。

断言します。
ヒカリさんは、間違いなく話すことが得意になりますよ。
なぜなら、反省しているから。
なんであれ、向上しない人は、失敗や停滞している現状を正面から見ることができないんだ。
臭いものにはフタをして、気晴らしにTikTokを眺めたりゲームをしている。
あるいは「運気がよくなる」おまじないや占いばかり気にしている。

ヒカリさんは、そうじゃない。
自分の欠点を具体的にあげられる。
悩むだけの胆力がある。
そして「聞き役」に徹することもできる。
あと、ほんのわずかな努力で、口下手は解消されるよ。
今回は、そのコツを教えますね。

一言に重みをつける

まず、「弁が立つ人」がすべて「話がうまい人」ではないことを知ろう。
世の中には「立板に水」と言われるように、高いところから低いところに流れる水のごとく話す人がいる。
早口で、甲高い声でしゃべるYouTuberをヒカリさんも何人か知っているでしょ。
彼らが、リアルな世界で通用するかといえば、難しいでしょう。
すらすらと淀みなく流れる言葉は、人の心に刺さらない。
情報以上のものになりにくいのです。

逆に口下手をうまく利用した人の方が信頼を得るケースがあります。
私の知り合いの社長さんは、栃木県出身で長く東京に住んでいても、言葉のお尻があがるイントネーションが抜けませんでした。
お酒の席で聞いた話では、若い頃から方言が恥ずかしくて、口下手になってしまったそうです。
それでも社長になれたのは、彼の上司の一言だったそうです。

「お前は得だな、口数が少ないから、深く考えて発言しているように聞こえる」

この言葉にハッとしたとか。
ペラペラと話せるだけが良いわけじゃない。
口下手を利用して、一言に重みをつけていこうと考えたそうです。
普通の人が「大丈夫ですよ」と軽く言うところを、腹の底から気持ちを込めて「大丈夫」と言う。
それで信頼を得てきました。

コンプレックスに感じていることが逆に「味」や「個性」になる。
ペラペラとしゃべれる人をめざすより、言葉に体重をぐっとかけて、吐いた一言をていねいに相手の心に置きにいく。
そんな気持ちでいる方が、ヒカリさんらしい雄弁が身につくのではないでしょうか。

手本にしたい人をつくる

私は、長くスピーチライターという仕事をしています。
人のスピーチを書いて、その人が人前で語るときのアドバイスをする仕事です。
政治家や企業のエグゼクティブもたくさん手がけてきました。
そこでわかったことは、こうした人の8割近くは、話すのが不得意だということです。
うまいと思っている人は、喋りすぎる。
話があちこちに飛びます。
苦手な人は、楽屋にこもって「自信がない」と蒼白になっている。
壇上で頭が真っ白になって1分以上無言だった人もいます。

こうした人たちの話し方を劇的に上げるコツがひとつだけあります。
それは、「自分が目指す話し方のお手本を探して、真似る」ことなんです。
ヒカリさんの「推し」が話し上手ならその人の真似をしてもいい。
YouTubeを見て「この人の話し方いいなぁ」と思ったら、その人から学ぶ。
話の中身だけでなく、立ち振る舞いや笑顔の浮かべ方、手振り身振りをモノマネする。
その人になりきる。
繰り返していると、自分ではなく、その人がヒカリさんの体を借りてしゃべっているような気持ちになる。
憑依するんですね。
こうなると、恥ずかしいという気持ちがなくなる。
体は自分でも、話しているのは理想の人なんだからね。

「学ぶ」は「真似ぶ」からきた言葉だと言われます。
話し方などはまさにこれ。
私たちは、親の言葉を真似て、話し方を覚えてきたのです。
これからは親ではなく、自分が理想とする人の話し方を真似ていく。
それで劇的に話し方が変わりますよ。

これは、ビジネス上の話だけではありません。
毎日の生活においても、「あぁ、この人の喋り方、素敵だなぁ」と思うことがあれば、どんどん真似をして、自分のものにしていきましょう。

私が教えている大学に、ご飯をご馳走したときの反応が極めてうまい学生がいます。
一口食べて、噛みしめて「うううん!」と唸る。
「こんなおいしいもの、初めて食べた!」を伝えているように聞こえます。
少しだけ驚きが混じるのです。
よく聞いていると、彼女は人の話を聞いているときも「うううん!」と言う。
「初めて聞いた!面白い!」という気持ちが伝わってきます。
聞けば、彼女のお母さんもその反応を褒めているとか。

私は、早速この「うううん!」と取り入れました。
人真似ではあるけれど、これで相手もうれしそうな顔をしてくれます。

こんな些細なことで構わないです。
人をよく観察して、良いと思ったところを真似ていく。
反対に、「嫌だな」と思う話し方を反面教師にしてやめる。
意識すれば簡単にできます。
何よりも人の話を真剣に聞けるようになります。

まずは無闇に言葉数を増やすよりも、今手持ちの言葉に思いを込めることを心がける。
そして自分の理想とする話し方をどんどん真似ていく。
真似る人が増えれば増えるほど、ヒカリさんの中で言葉が醸成されて「ヒカリらしいねぇ」とみんなに言われる語り手になれるはずです。

ヒカリさん、応援しています。
いつの日か、いっしょに語り合いたいです。

ありがとうございました。

ひきたよしあき

コミュニケーションコンサルタント、コラムニスト、(株)SmileWords 代表取締役。博報堂でCMプランナー、クリエーティブディレクターとして数々のCM制作を手がける。政治、行政、大手企業のスピーチライターとしても活動。2022年より大阪芸術大学放送学科客員教授。主な著書に『5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本』(大和出版)、『一瞬で心をつかみ意見を通す対話力』(三笠書房)、『大勢の中のあなた へ』(朝日学生新聞社)、『人を追い詰める話し方 心をラクにする話し方』(日経BP)など。

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(イラスト 江夏潤一)

連載一覧

  • 第1回 あなたを全力で肯定する理由
  • 第2回 私は自己肯定感が低いです。
  • 第3回 コミュ障です。
  • 第4回 コスパの悪い人間です。
  • 第5回 ダメ上司です。
  • 第6回 本気で人を好きになれません。
  • 第7回 夢がありません。
  • 第8回 若い子には勝てません。
  • 第9回 社畜です。
  • 第10回 不寛容な人間です。
  • 第11回 老害でしょうか。
  • 第12回 母親失格です。
  • 第13回 モテない男です。
  • 第14回 口下手です。
  • 第15回 都合の良い女です。
  • 第16回 ネガティブ思考です。
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