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あなたを全力で肯定する言葉【第17回】「アピールポイントがありません。」|ひきたよしあき

2023年5月23日

私たちは、常に評価の目に晒されて暮らしています。「いいね!」という言葉にも、「おまえを評価してやる」という意味が含まれています。人間関係が希薄になる中で、裁きの目を浴びている。今、あなたに必要なのは、あなた自身を全力で肯定する言葉です。私はコミュニケーション・コンサルタントとして、小学生から政治家までを「言葉の力」で応援してきました。現場で培ったノウハウで、エールを送りたい。あなたを、丸ごと、全力で肯定します。

【第17回】「アピールポイントがありません。」

これから就活が始まります。小学校時代はサッカーをやっていたけれど、遊びの延長程度で中途半端に終わりました。中学も高校も帰宅部。勉強は苦ではなかったので普通に大学に進学して、コロナ禍でサークル活動や飲み会もなく(コロナがなくてもサークルには入らなかったかもしれませんが)、リモート授業をこなし、塾講師のバイトで小銭を稼ぎ、何に使うわけでもなく何となく過ごしていたらもうすぐ就活が始まります。自分が企業を選ぶほどやりたいことがあるわけでもないので、無難なところを受けるつもりです。ただ、自己PRすることが皆無だと気付きました。何もない人間は、何をPRすればいいんでしょうか?
(ター坊 20歳)

 

ター坊さん、メッセージありがとう。

私は現在、2つの大学で教鞭をとっています。
教師生活は、10年近くになりますが、毎年ター坊さんのように「PRするものがない」という学生が相談にやってきます。
その数たるや、恐ろしいものです。
毎年、相談にくる子の半分以上は、「誇れるものがない」という学生です。
心配することはありません。ター坊さんが、普通なんです。
体育会に入っているとか、英語がペラペラだとか、そういう誇れるものをもって、行きたい企業を受ける人の数は圧倒的に少ないということを、まず肝に銘じてください。

日々の生活に、誇れるものは落ちている

数年前、私のところに女子学生がきました。
就活の相談にきたのですが、ルーズリーフに2、3行、米粒のような字で書いてあるだけ。
エントリーシートに書き込むネタが皆無の状態でした。

「私、学生時代、何もやってないんです。部活はやってない、留学もしてない、学校行事でがんばったこともない、本も読んでない、成績もそんなによくない。書けるものが何もないんです!」

と急に言い出し、涙ぐみました。

私は、「大丈夫、多くの学生はそんなもんだ」と言い、詳しく彼女の生活を聞きだしました。

「何もできてないのは、家に祖母がいて、その面倒を見るために早く帰らなければならなかったからなんです。だから、学校で何もできなかった……」

と聞いて、彼女にこう言いました。

「何もやってないわけじゃないじゃない。おばあさまの面倒を見ていた。これだって立派な『自分の誇れるもの』だよ」

というと、彼女はポカンとしました。

彼女が目指していたのは、ホテル業界です。
インバウンド指向が強く、英語力が重視されていました。
その実力は彼女にはなかった。
しかし、これからの高齢化社会を考えれば、シニアの気持ちに寄り添える人材は必要です。

私は彼女に、介護の様子を細かく書き出すように言いました。
すると「お味噌汁の飲み方ひとつで体調がわかる」という書き出しから、高齢者に寄り添う様が書かれていました。

彼女は、即座に内定をとりました。
それも最高峰のホテルです。

4年間、何もやっていない人は、滅多にいない。
マンガを読み耽っていた、バイトに明け暮れていた、ゲームに興じていた……何かをやっているはずです。
それを「何もやっていない」と断じず、「これをやってきたんだ」と胸を張るネタに変えればいいだけの話です。
探してみてください。
ター坊さんにもきっとあるよ。

エピソードノートを書こう

就活のネタは、自分の中にあります。
ネットで良さげなPRネタをコピペして貼りつけても、会社にはすぐにバレます。
こういう輩は、とても多いので人事の方も学んでしまっているからね。

先ほどの「祖母の介護」のようなネタを見つけるために「エピソードノート」をつくることをおすすめします。

これは、生まれてから今日までの自分を一年一年振り返っていくために記述するノートです。
書き方は、こうです。

1. ノートを開き、左ページに「0歳」と書き、右ページにター坊さんが生まれた年を書く。2002年とか、西暦を書きましょう。

2. 次のページを開いて、「1歳」と左に書き、右ページに1歳のときの西暦を書く。これを続けて、20歳で、2023年のページまで書きましょう。

その見開きは、ター坊さんの、歴史ページです。
例えば17歳と書いたページを開いて、17歳のときの自分を思い出しましょう。
打ち込んだこと、好きだった人、挫折したこと、嬉しかったこと……なんでも構いません。
それを左ページに書きます。

右ページには、その年に起きた事件や流行した言葉などをネットで検索して書き込みます。
こうすると、自分が17歳のとき、社会はどんな状況だったかを語ることができるようになります。
人事の人に「あぁ、あの時代ね」とわかってもらえます。

20歳までの人生を一年一年吟味する。
好きだった言葉、読んだ本、親の一言、旅行先での出来事、受験のつらさ……。

歴史ページができたら、今のター坊さんを形成している10個のエピソードを選んでみましょう。
そのエピソードが、自分の原点を語るネタになります。

教えた学生は、
「9歳のとき、母に買ってもらったラジオが私の原点です」
という話を見つけ、マスコミに向けたエントリーシートを作成し、見事に内定を勝ち取りました。

ぜひ、ター坊さんも「エピソードノート」を作ってみてください。
自分を発見できます。
自分を見つけることが、就活のイロハのイなんです。

就活というものは、幼稚園か保育園からはじまった学生生活にピリオドを打つためのもの。
「この期間で、私は何を経験し、学んできたか」を棚卸しするものです。
ター坊さんにも、きっと素敵なエピソードがあるはずです。
誰ももっていないあなただけの体験談。
この掘り下げをしてみてください。

戸惑うことも多いでしょう。
世代の違う人と話が合わず苦労することも多々あるはずです。

しかし、就活はある意味、お見合いのようなもの。
実力より、相性で決まる要素も多いのです。
心配いりません、どんどん前に進んで行きましょう。

ター坊さんの就活を、全力で応援しています。

ひきたよしあき

コミュニケーションコンサルタント、コラムニスト、(株)SmileWords 代表取締役。博報堂でCMプランナー、クリエーティブディレクターとして数々のCM制作を手がける。政治、行政、大手企業のスピーチライターとしても活動。2022年より大阪芸術大学放送学科客員教授。主な著書に『5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本』(大和出版)、『一瞬で心をつかみ意見を通す対話力』(三笠書房)、『大勢の中のあなた へ』(朝日学生新聞社)、『人を追い詰める話し方 心をラクにする話し方』(日経BP)など。

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(イラスト 江夏潤一)

連載一覧

  • 第1回 あなたを全力で肯定する理由
  • 第2回 私は自己肯定感が低いです。
  • 第3回 コミュ障です。
  • 第4回 コスパの悪い人間です。
  • 第5回 ダメ上司です。
  • 第6回 本気で人を好きになれません。
  • 第7回 夢がありません。
  • 第8回 若い子には勝てません。
  • 第9回 社畜です。
  • 第10回 不寛容な人間です。
  • 第11回 老害でしょうか。
  • 第12回 母親失格です。
  • 第13回 モテない男です。
  • 第14回 口下手です。
  • 第15回 都合の良い女です。
  • 第16回 ネガティブ思考です。
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