私たちは、常に評価の目に晒されて暮らしています。「いいね!」という言葉にも、「おまえを評価してやる」という意味が含まれています。人間関係が希薄になる中で、裁きの目を浴びている。今、あなたに必要なのは、あなた自身を全力で肯定する言葉です。私はコミュニケーション・コンサルタントとして、小学生から政治家までを「言葉の力」で応援してきました。現場で培ったノウハウで、エールを送りたい。あなたを、丸ごと、全力で肯定します。
【第3回】「コミュ障です。」
私たちは、常に評価の目に晒されて暮らしています。「いいね!」という言葉にも、「おまえを評価してやる」という意味が含まれています。人間関係が希薄になる中で、裁きの目を浴びている。今、あなたに必要なのは、あなた自身を全力で肯定する言葉です。私はコミュニケーション・コンサルタントとして、小学生から政治家までを「言葉の力」で応援してきました。現場で培ったノウハウで、エールを送りたい。あなたを、丸ごと、全力で肯定します。
初対面の人はもちろん、同じコミュニティ内でも上手にふるまえません。
人の顔色をうかがい言葉を選んで、自ら壁を作ってしまいます。
きっと周りからは「とっつきづらい」「ノリが悪い」と、思われているんだろうな……。
(けんた 18歳)
けんたくん、メッセージありがとう。
私にメッセージを送ってくれたということは、「自らの壁」に、すでに小さな穴があいた、ということだよ。
「悩みごと」を書き送る勇気がある。
小さなことかもしれないけれど、実は大きな一歩なんだ。
コミュ障の人はまずこの一歩が踏み出せないで困っている。
さらに、けんたくんの文章は、自分の様子をよく観察し、上手に伝えている。
しっかりと言葉を構成する力もある。
今日あいた小さな「自らの穴」を少しずつ広げていこう。
私も力を貸すからね。
コミュ障とコミュ障
「コミュ障」と一言で言っても、医学的に診断される「コミュニケーション障害」から、ネットなどでよく使われる「コミュ障」まで幅が広い。
「コミュ障」は、病気よりは少し軽いニュアンスで、人前で上がったり、場の空気が読めない発言をしてしまうことを指す。
私は、医者ではないので、医学に基づいたアドバイスはできない。
でも、コミュニケーションのプロとしてなら、「コミュ障」のけんたくんの力になれるかもしれない。
症状がひどいときは、ちゃんとお医者さんにかかることをお勧めします。
会話は、サルの毛づくろいと同じ
さて、「コミュ障」の話をしよう。
この前提として、けんたくんに知ってほしいことがあります。
「言葉の起源は、サルの毛づくろいだった」
進化生物学者のロビン・ダンバー氏の説です。
まだ人間がサルだった頃、集団生活をしていた私たちの祖先は、互いに毛づくろいをしてコミュニケーションをはかっていたんだ。
「じゃ、今度は、私が毛づくろいをするわ。
ゆっくり眠っていて大丈夫。敵がきたら教えるから!」
という感じで、お互いを癒していた。
親密なふれあいによって生まれる「脳内エンドルフィン」が、言葉の発達に深く関係したとロビン博士は言っています。
もちろん、さまざまな学説があるうちのひとつに過ぎないけど、私はこの話が好きなんです。
つまり、会話というものは、何を話すか、どういう結論に導くか、どう理路整然に話すかなんてこと以前に、「心のスキンシップ」をはかるものなんだ。
けんたくんは、話題や意見がなければ会話ができないと思っていないかな。
情報がなければ、話す価値がないと考えていないかな。
そんなことは全くいらない。
まずは、心のスキンシップを行う気持ち。
態度で示すならば、笑顔だよ。
口角を上げることなんだ。
「楽しいこともないのに笑えない」
と言うかもしれない。
違うんだ。
人間は、面白いことがあるから笑うのではなく、笑うから面白いんだ。
けんたくんが、口角をあげる筋肉運動の回数を増やすだけで、きみのことを「とっつきづらい」なんて思わなくなる。
試してごらん。
モンキートーク
さて、次だ。ダンバー博士に習って、自分をサルだと思う。
サルだから、言葉がない。
では、どうやってコミュニケーションをとるか。
それは、「驚きの気持ち」なんだよ。
相手の言ったことに、
「おお〜」
「うわぁ〜」
「へぇ〜」
などを使って、驚きや喜びの「気持ち」を表現する。
人は自分の話に驚いてくれる人が好きなんだ。
内容なんて関係ない。
けんたくんは、この段階ではサルだから、「おお〜」とモンキートークを間に挟むだけでいい。
もちろん笑顔で。
「すの力」「あ行の力」
次の段階だ。
サルから、だんだんと人間になっていく。
ただ、ここでも内容はいらない。
何をしゃべろうかと考えだすとコミュ障に逆戻りだ。
覚えてほしいのは、「すの力」と「あ行の力」だ。
「すの力」とは
「す」・・・すごい、すてき、すばらしい、するどい、すき
と言った「す」ではじまる言葉。
歯を通り抜ける「す」の音は「風」を表し、新鮮で神聖な言葉が集まっているといわれている。
モンキートークの間に、「すの力」を意識的に挟むだけで相手を最大限に賛辞していることになる。
そして、「あ行の力」は。
あ ありがとう
い いいね!
う うまい!
え えらい
お おかげさま
あ行の母音は、波動が伝わりやすいといわれている。
人に尊敬や感謝の念を届けることができる。
けんたくん。
何を話そう、どう話そうなんて考える前に、
1 モンキートーク 驚きの言葉
2 「す」の力
3 「あ行」の力
を少しずつ、会話に入れるトレーニングをしよう。
お風呂に入った瞬間に「おおお(気持ちいい)」と声にだす。
こんなことでいいから、サルになる訓練をしよう。
オウム返しで、会話にする
「でも、サルのままでは会話ができないので、やっぱり仲間に入れないのでは」
とけんたくんは、心配するかもしれない。
随分と積極的になってきた。
すばらしいね!
最後に、コミュ障のけんたくんに、内容を考えずに会話に参加する方法を教えよう。
それはオウム返しをすることなんだ。
モンキートークとオウム返しの組み合わせで、会話を進めるのを見てほしい。
相手 「昨日、寝不足でさぁ」
けんた 「あ〜!寝不足ですか!」
「あ〜」に「それは大変」という気持ちをこめて、「寝不足ですか」をオウム返しにする。
それだけで受け止めたことになるし、おしゃべりのボールはしっかりと相手に投げ返されている。
相手 「そう、ネトフリみてたら、朝になっちゃって」
けんた 「う〜む、ネトフリかぁ」
「寝不足の正体はネトフリなんですね」を実感をこめてオウム返しにする。
これだけの話だ。
ムードを壊さない人になるだけでいい
笑顔、モンキートーク、「すの力」「あ行の力」、オウム返し。
これだけで、少なくともけんたくんを「とっつきづらい」「ノリが悪い」と思う人はいなくなるはずです。
会話は、心のスキンシップ。
これを忘れないでね。
また「自らの壁」にどれくらいの穴があいたかメッセージをくださいね。
けんたくん、ありがとう。
ひきたよしあき
(イラスト 江夏潤一)
連載一覧
- 第1回 あなたを全力で肯定する理由
- 第2回 私は自己肯定感が低いです。
- 第3回 コミュ障です。
- 第4回 コスパの悪い人間です。
- 第5回 ダメ上司です。
- 第6回 本気で人を好きになれません。
- 第7回 夢がありません。
- 第8回 若い子には勝てません。
- 第9回 社畜です。
- 第10回 不寛容な人間です。
- 第11回 老害でしょうか。
- 第12回 母親失格です。
- 第13回 モテない男です。
- 第14回 口下手です。
- 第15回 都合の良い女です。
- 第16回 ネガティブ思考です。
- 第17回 アピールポイントがありません。
- 第18回 妻に怒られてばかりです。
- 第19回 親を大切にできません。
- 第20回 自分、性格悪すぎです。
- 第21回 問題意識が強すぎて疲れます。
- 第22回 向上心がありません。
- 第23回 私は変わるべきなんでしょうか。