法獣医学の世界【第4回】初めての現場|田中亜紀
初めての現場 虐待事件の発生現場へ カリフォルニア大学デービス校獣医学部の大学院生で、シェルターメディスンを学んでいた私は、その日も、いつものように動物シェルターに研究材料の採取をしに行こうと朝、大学に出かけました。 当時は「動物シェルターにくると何故猫はみんな病気になっていくのか」というテーマで、猫とストレスと病気の因果関係を調べるために毎日のように動物シェルターに通っていました。動物シェルターには様々な理由で動物達が集まってきますが、その中でも「動物虐待」の占める割合は意外と多く、日々、虐待の被害にあ ...
法獣医学の世界【第3回】初めての多頭飼育崩壊|田中亜紀
初めての多頭飼育崩壊 シェルターメディスンを学ぶ日々 アメリカのカリフォルニア大学デービス校において、念願のシェルターメディスン(動物保護施設における獣医療)の勉強を始めた私は、大学院の授業も、出会う人達も、校内で交わす会話も何もかもが新鮮で楽しく、真新しい経験の連続でした。デービスの大学の空気を吸っているだけで嬉しくて、感動したものです。授業のない時は、大学近辺のアニマルシェルターに通い、シェルターの専属獣医師について回ってシェルターメディスンの実践を一から学びました。 また、大学のシェルターメディスン ...
法獣医学の世界【第2回】法獣医学にたどり着くまで ―シェルターメディスンとの出会い―|田中亜紀
法獣医学にたどり着くまで ―シェルターメディスンとの出会い― 「アニマルシェルター」を学びたい 環境毒性学部にきて3年目になり、このままここに居続けるのか、どうするのか、と悩んでいた時に、「Ecotoxicology(生態毒性学)」という授業を受けました。環境中の毒物が動物を含む生態系に及ぼす影響について勉強する授業でしたが、最後に学生が一人ずつテーマを決めて発表しなければなりませんでした。 私は日本のイヌワシの鉛中毒について調べ、紹介をしたのですが、授業が終わってから担当教授に、「Akiは今、本当にやり ...
法獣医学の世界【第1回】法獣医学にたどり着くまで―私の原点―|田中亜紀
法獣医学にたどり着くまで ―私の原点― 動物虐待に科学の視点を 私が「法獣医学」に関して本格的な取組みを始めたのは、2019年に米国から帰国してからのことです。「法獣医学」とは、法医学に対応する獣医学として、動物虐待などの被害を受けて亡くなってしまった動物達を解剖して調べるだけでなく、生きている動物においても、「不審な」状態について獣医学的に探究する学問ですが、まだ日本では新しく始まったばかりの分野です。 「不審な状態」、つまり、動物の受けた被害(怪我や病気)が、人為的な「虐待」によるものなのか、あるいは ...