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モヤモヤしながら生きてきた【第6回】“何かになること”を押しつけられない社会へ|出田阿生

【第6回】“何かになること”を押しつけられない社会へ 知らなかった。これほど楽しい世界があったなんて……! というと大げさだが、映画のカーアクションで、生まれて初めて興奮した。 うわあ、ちょっとなにこれ!! 思わず映画館の座席から身を乗り出し、声が漏れそうになった。 40代半ばにして初の体験である。そしてはたと気づいた。 アクション映画が面白いのは、主演俳優に自分を重ねて感情移入できるからなんだ。 あれ、もしかして人生損してきたのかな……一抹の寂しさに襲われた。 ゾンビ映画に大興奮できたわけ それは、韓国 ...

『これからの時代を生き抜くためのジェンダー&セクシュアリティ論入門』 三橋順子×北丸雄二 特別対談 「LGBTQ+…これからの世代に伝えたいこと」第4回

【第4回】いまの現象だけ見てもわからないことがある 日本文化でセクシーなものは、うなじ!? 三橋:大学の講義で、学生にとってインパクトが大きいのは、女性性の表象の話ですね。特に、バストが大きければ大きいほどセクシーというのは共同幻想です、っていうと男子学生は雷に打たれたようにショックを受けるし、女子学生も戸惑います。 北丸:この本の第3講に浮世絵の美人画が掲載されています。そこで女性のおっぱいが見えている。三橋さん、講義では学生に、これは一体何なんだって聞くんですよね? 三橋:乳首が見えてる絵で、名人級の ...

『これからの時代を生き抜くためのジェンダー&セクシュアリティ論入門』 三橋順子×北丸雄二 特別対談 「LGBTQ+…これからの世代に伝えたいこと」第3回

【第3回】ハッピーゲイライフがやって来た 外国の影響をほとんど受けなかった日本の女装カルチャー 北丸:つまり1990年前後ごろから日本のセクシュアル・マイノリティは伏見さんの本や大塚隆史さんのゲイやキャンプ・カルチャーのムック本が出たりと、ゲイとレズビアンを中心にひとつの転換期を経験することになるんですが、それは、欧米からはじまったゲイリベーション(ゲイ解放運動)の文脈をくんだものですよね。三橋さんはそうじゃなくて、当時も日本の女装史を研究していた。彼らと自分で、「見ているものが違うな」という感じはありま ...

『これからの時代を生き抜くためのジェンダー&セクシュアリティ論入門』 三橋順子×北丸雄二 特別対談 「LGBTQ+…これからの世代に伝えたいこと」第2回

【第2回】LGBT当事者にはどう接すればいい? 「“普通”に接してください」 北丸:第5講の質問で、「LGBT当事者にはどう接すればいいのでしょう?」ってありますよね。 三橋:各章末に設けた質問コーナーは、実際の講義で出た質問からセレクトしましたけど、「どう接したらいい?」は、ある地方紙の記者からも聞かれました。2017年です。「“普通”に接してください」って答えたら、ポカーンとして言葉がしばらく途切れちゃった。特別な対応をしなきゃいけない、という思い込みがあって、だからどうしたらいいか、具体的に教えてほ ...

モヤモヤしながら生きてきた【第5回】「水着撮影会」問題を自分事として考える|出田阿生

【第5回】「水着撮影会」問題を自分事として考える 水着のサイズを定義するわけ 三角ビキニと呼ばれる水着がある。ブラジャーの部分が三角形になっているアレ。その三角形の底辺と高さが10センチ以上あれば、日本女性の乳房はだいたい隠れるらしい。 こんな数字を出してきたのは、「埼玉県公園緑地協会」。埼玉県から県営公園の管理運営を委託されている公益財団法人だ。おかたい組織が、なぜこんな計算を? その疑問に答えるには、「水着撮影会」から説明する必要がある。モデルやアイドルの水着姿を、一般の人がお金を支払って撮影するイベ ...

『これからの時代を生き抜くためのジェンダー&セクシュアリティ論入門』 三橋順子×北丸雄二 特別対談 「LGBTQ+…これからの世代に伝えたいこと」第1回

【第1回】セクシュアルマイノリティの現場から 二人の共通項は“現場主義” 三橋:私が北丸さんとお話するようになったのは、ここ3、4年のことです。ある忘年会があって、キッチンで次から次へとお料理を作ってる人がいました。どれも美味しいから、てっきりプロのシェフを呼んだのかと思ったら……それが北丸さん。だから初対面のあいさつは、「ごちそうさまでした、美味しかったです」でしたね。 北丸:あのときは誰も手伝ってくれなくて、ひとりで60人分ぐらい作ったんですよ。 三橋:その前からお名前は存じ上げていたんですけどね。 ...

モヤモヤしながら生きてきた【第4回】祖母の死とケア労働|出田阿生

【第4回】祖母の死とケア労働 前の回でも触れたが、2023年秋、大好きな祖母が死んだ。 「余命わずか」の診断を受けて入院先から自宅に戻し、家で看取った。 キンモクセイが甘い香りをまき散らし、散り始めるまでのわずか10日間だった。 コロナによる面会制限が続く中、病院でひとりぼっちで死なせたくなかった。 とはいえ、仕事を休んでまで看取り介護をしたのには理由がある。 子ども時代、祖母が親代わりだったからだ。 我が家は母子家庭。私が7歳、2人の妹が5歳と3歳のときに両親が離婚した。 専業主婦だった母は実家に身を寄 ...

モヤモヤしながら生きてきた【第3回】家父長制クソ食らえ|出田阿生

【第3回】家父長制クソ食らえ 何気ない日常に、「家父長制」がひょっこり顔を出す。 つい最近、母方の祖母が亡くなったとき、おや?と思う体験がいくつかあった。 祖母を自宅で看取ることに 誤嚥性肺炎で入院し、あっという間に飲まず食わずになってしまった祖母。 点滴で命をつないでいたが、最大3カ月までという急性期病棟の入院期限が迫っていた。 次にどこへ行くか。今まで入っていた有料老人ホームは、痰(たん)の吸引や点滴ができないから無理。医療措置のできる施設に新しく入居することも検討した。だが、医師には「余命わずか」と ...

モヤモヤしながら生きてきた【第1回】立派な「男」になろうとしていた私|出田阿生

【第1回】立派な「男」になろうとしていた私 女としての人生を、モヤモヤしながら生きてきた。でもなんでモヤつくのか、長いこと分からなかった。それがこの5年ほどで事態は急変した。ほとんど「ない」ことにされていた女性への差別が、声を上げる人が増えることで「ある」と認識され始めた。その理不尽さに怒る空気が社会に広がった。大げさでなく「生きててよかった」と喜びをかみしめている。 私は一般紙で新聞記者をしている。おじさんと間違われがちな名前だが、女性だ。現在、働き始めて25年が過ぎたところだ。 ジェンダーをめぐる社会 ...

『師弟百景 “技”をつないでいく職人という生き方』 井上理津子×金井真紀 特別対談 「市井のひとの話を聞く〜ライフストーリーを描くということ」第4回

【第4回】初めての似顔絵は新宿ゴールデン街で ゴールデン街のママをして初めて似顔絵を書いた 井上 新宿ゴールデン街のお話もしたいですね。『酒場學校の日々 フムフム・グビグビ・たまに文學』(ちくま文庫)は金井さんの文庫になったばかりの本。 金井さんがいいご経験をされたのは、草野心平さんが新宿ゴールデン街に開いた酒場學校という5席ぐらいしかないお店です。そこでひょんなことからママをなさったんですね。そしてこの本を見て思ったんですが、なぜ、金井さんはこんなに絵が上手なんですか? 金井 絵を描くのは好きでもないし ...

『師弟百景 “技”をつないでいく職人という生き方』 井上理津子×金井真紀 特別対談 「市井のひとの話を聞く〜ライフストーリーを描くということ」第3回

【第3回】取材対象者が語る「嘘と真実」 インタビューをするときは「相手を好きになったらどうしよう」と思って行く 井上 金井さんの『世界はフムフムで満ちている』の中で「誰かにインタビューをするならとことん好きになって、愛してインタビューをしなさい」という言葉がありました。 金井 はい。森沢明夫さんという小説家をインタビューしたときに教えてもらった秘訣です。森沢さんは、もともとノンフィクションを書いていた人で、ものすごく取材する方なんですね。あるとき格闘家の密着取材をしていて、「つぎの試合は負けた方が読み物と ...

『師弟百景 “技”をつないでいく職人という生き方』 井上理津子×金井真紀 特別対談 「市井のひとの話を聞く〜ライフストーリーを描くということ」第2回

【第2回】書くことを仕事にしようと決めた瞬間 井上理津子は「タクシー運転手」になりたかった!? 井上 若いとき、われわれ一般人は遊び呆けてるじゃないですか。でも職人さんと弟子入りする人たちは、若い時期の何年かを捨てるというのも変ですが、それぐらいの覚悟でその世界に入ります。入るとそこが心地よくなるんですかね。取材をしていて私はお坊さんの世界に似ているなと思いました。金井さんはそれぐらい全部を捨てて、仕事に邁進したことはありますか? 金井 ないです!! 井上さんは? 井上 ないですね。金井さんは職人的な部分 ...

『師弟百景 “技”をつないでいく職人という生き方』 井上理津子×金井真紀 特別対談 「市井のひとの話を聞く〜ライフストーリーを描くということ」第1回

【第1回】井上さんの職人技は「しつこい取材」にあり 師匠と弟子の距離感で24時間いたら好きになっちゃうかも 金井真紀(以下、金井) 本日初めましてですが、私は以前から井上理津子さんにずっと憧れていました。この機会に感謝します。 井上理津子(以下、井上) 私も金井さんの本を拝読して、メロメロになりました。『世界はフムフムで満ちている 達人観察図鑑』 (ちくま文庫)を読みましたが、 目も耳もいい人という印象です。本の中に関西弁の職人さんが出てきます。関西弁は、関西出身者が書こうとしても難しいのに、一字一句間違 ...

大谷翔平選手の変化球が投げられるようになるかも!? 自分に合った変化球がわかる、習得できる『変化球を科学する「曲がるボール」のメカニズム』

工藤公康氏推薦! スポーツ選手の動作解析の研究を行っている筑波大学体育系准教授・川村卓氏と、プロ野球選手のパーソナルトレーナーを務めた井脇毅氏による『変化球を科学する 「曲がるボール」のメカニズム』を紹介します。 これからは、変化球をいかに効果的に使えるかが求められる時代 変化球の種類は一説によると20とも30とも言われています。 著者によると、ピッチャーは一人ひとり投げ方に特徴があり、その特徴である自分の球質を知ることで習得しやすい変化球や、その変化球を用いた効果的なピッチングができるようになるとのこと ...

『これからの時代を生き抜くための文化人類学入門』 奥野克巳×国分拓 特別対談 「ボルネオとアマゾン、森の民の生き方に学ぶ」第5回

【第5回】狩猟民は「死」をどう捉えているのか 死者との交歓 国分:NHKスペシャル「アウラ 未知のイゾラド 最後のひとり」では、アウレ、アウラと名付けられた二人のイゾラドのうち、生き残ったアウラを取材しました。アウラは他の先住民保護区で暮らしていますが、そこは3万人規模の街から60kmくらいと、比較的、都市部に近い保護区です。 奥野:アウレはすでに亡くなったんですね。病気でしたか。 国分:ええ、癌だったようです。 奥野:アウラのドキュメンタリーでは、死に対してどのように考えているのか、ということも描かれて ...