2023年2月22日「猫の日」を記念して、『必死すぎるネコ』沖昌之さんと、占術研究家で、今『月と太陽でわかる性格事典』が話題の鏡リュウジさんの異次元対談が実現! 猫の飼い主さんには嬉しい、「占いの意外な使い方」を教えてくれました。さらに、写真集『必死すぎるネコ』の大ヒット、そして沖さんと“あの猫”とのご縁を鏡流に分析します。
※記事の最後に『必死すぎるネコ』写真特集があります
愛猫の誕生日や「出会った日」で占いができる
沖昌之さん(以下、沖): じつは『必死すぎるネコ』の編集さんに、ぼくが占い好きだっていう話をしたら、『月と太陽でわかる性格事典』を送ってくれたんです。ぼくは1月3日生まれなんですけど、ええことをたくさん書いてくださっているおかげで、気持ちよくお正月と誕生日を過ごすことができました(笑)。ありがとうございます。
鏡リュウジさん(以下、鏡): それはよかったです。ぼくはあまり猫とはご縁がないんですが、沖さんの『必死すぎるネコ』は面白く拝見しました。黒柳徹子さんの帯文はすごいですね!
沖: はい、本当にありがたいことです。ぼくとしては、関西にいた頃にずっとラジオで聴いていたあの鏡リュウジさんと、こうして対談をすることになるとは、思ってもみないことで、とても光栄です。
サインいただいてもいいですか?
(鏡さんにサインをもらってよろこぶ沖さん)
鏡: ぼくもサインもらってもいいですか? あ、サインが猫になってる、かわいい!
沖: うわ~、ありがとうございます!
今回、ぼくのことももちろん分析していただきたい気持ちはあるんですけど、せっかく猫好きの方がたくさん見てくださっていると思うので、お聞きしたいことがありました。
世の中には占いがたくさんあって、中には「猫占い」「猫風水」というようなものも見かけますが、猫にも占いってあてはまるものなんでしょうか?
鏡: 猫と占いは親和性が高くて、特に猫の絵柄のみが描かれた「猫タロット」は一つのジャンルを確立するくらい、数があります。逆に、犬タロットというのはかなり少ないんです。
沖: 面白いですね! たしかに犬タロットというと、人間にとって都合の良い結果しか出ないような印象がありますね。猫タロットは、予測不能で、思い通りのものが出そうにない……そこが面白い気がします。
鏡: タロットをやっている人には猫と暮らしている人が多いという傾向もあります。なんでも、猫も一緒になってタロットを見たり、意味ありげにタロットに手を置いたりするんだそうですよ。
それでご質問の件ですが、占星術は、猫やほかの動物にあてはめて読むこともできるんです。僕の師匠であるマギー・ハイド先生のご夫妻は猫を歴代たくさん飼っているんですが、「うちの子は牡牛座だから食のえり好みが激しくて」なんて言うんです(笑)。
沖: じゃあ、この『月と太陽でわかる性格事典』も、愛猫に使えるんですか?
鏡: はい、占星術の世界でよく言われるのが、動物には「月の星座」が大事だっていうこと。家畜化されているとはいえ、犬猫も他の動物も本能で生きていますよね。占星術では、月は身体性を象徴する星なので、動物を見るときは月のサインを意識するといいですよ。
沖: その場合は、やっぱり猫の生年月日で見るんでしょうか?
鏡: はい、誕生日が基本です。でも動物の場合は、生年月日がはっきりしない場合もありますよね。そういう場合は、その子と出会った時を使うのもいいのではないかと思います。
沖: そうなんや!
鏡: つまり「ふたりの誕生日」です。
沖: これは猫の飼い主さんには嬉しい情報なんじゃないでしょうか。飼い猫ではなくてもいいってことですか?
鏡: そう、重要なのはその人にとっての運命を象徴するタイミングですから。
沖: 生年月日のわからない「保護猫」と暮らしている方も多いので、ぜひ出会った日や、家族に迎え入れた「ウチの子記念日」のページを読んでみてもらいたいですね。愛猫のことがもっとよくわかったり、猫から自分へのメッセージが書いてあったりして。
占星術の新たな楽しみ方を知りました。
沖さんが猫写真家になったきっかけ「ぶさにゃん先輩。」との出会い
鏡: 沖さんが猫写真家になるきっかけになった「ぶさにゃん先輩。」との出会いの日を見てみると、面白いかもしれませんよ。何年の何月何日でしたか?
沖: 2013年の大晦日です。
太陽*山羊座/月*射手座
<夢見るリアリスト>
あなたは冷徹なビジネスパーソン。けれどその反面、理想を追いかける社会改革者のときもありますね?(中略)あなたのなかには「老賢者」の部分と「無鉄砲なティーンエイジャー」の部分が少しずつあって、それを互いに活かし合い、とても独創的で、しかも儲かることを考えつきます。(後略)
沖: え、これぼくのことです(笑)。
写真の世界では、猫写真って評価が高くないんですよね。「可愛いだけ」になりがちで、どうしても賞には勝てないといわれている題材です。写真教室で先生からそのように言われたときは、「自分の好きなものを否定された」という気持ちになり、めちゃくちゃショックでした。
だけど、その評価を変えたいっていう気持ちがずっとあったんです。その意味でぼくは「理想を追いかける社会改革者」だと思います。
(編集者に)よくそんなこと語ってたよね?
――はい。「冷徹なビジネスパーソン」「儲かることを考えつきます」という部分も当たっています。昔は販売計画のことでよく怒られました(笑)。
鏡: 山羊座って、すごくオーソドックスに「社会的にちゃんと評価されたい」という意識が強かったり、ヒエラルキーを気にする一面があるんですよ。
そして月の星座が「射手座」ですよね。射手座って、「遠くの世界に連れていってくれる」というイメージなんです。世界を広げるというか。
ぶさにゃん先輩。との出会いで、沖さんの世界が広がったんじゃないですか?
沖: ほんまや!
鏡: それから、大晦日に出会ったというのも象徴的です。大晦日は年と年をまたぐタイミングですよね。
沖: 「次の世界に行く」みたいな感じでしょうか? うわー、やっぱぶさにゃん先輩。すごいわ! ぶさにゃん先輩。に出会ってなければ、猫写真家になっていなかったかもしれないですからね。
猫写真集らしからぬ表紙には隠された理由があった!?
鏡: 沖さんのお誕生日は?
沖: 1978年1月3日なので「山羊座・天秤座」ですね。
太陽*山羊座/月*天秤座
<人なつこい一匹狼>
あまりに有能で抜け目なく、小気味のいいほど理性的なあなたは、人生をより要領よく思いのままに歩んでいるように見えます。とはいえそんなあなたでも、実は大きなジレンマをかかえています。(中略)協調性があり、おおらかで、外向的な性格に、持ち前の信頼性と鋭い視点が合わさったときのあなたはまさに無敵。(中略)またものごとの正当性にこだわり、自分の正義感や美意識に反するものに対しては烈火のごとく怒ります。
鏡: 「人なつこい一匹狼」というフレーズが、「猫」そのものですね(笑)。天秤座というのは“フェア”を象徴しています。山羊座にあらわれる「社会的評価」や「ヒエラルキー」のイメージと矛盾しているようですが、沖さんのなかでそれが両立している、ということなんでしょうね。
――おおらかさの中に野心を秘めているところや、のほほんと撮影しているように見えて、じつは計画的なところも、沖さんぽいです。
沖: のほほんて(笑)。かなり計画してるよ!
2015年に猫写真家として独立して、その年に出版させていただいた最初の写真集が伸び悩み、「次でダメだったらぼく自身に問題があるんだ」という気持ちでいたんです。そのさなか、猫雑誌『猫びより』で連載「必死すぎるネコ」が始まって。
『必死すぎるネコ』写真集の出版が決まったときに、「猫写真の評価を上げてくれる人」をスタッフに迎えたくて、梅佳代さんの写真集『うめめ』(木村伊兵衛賞受賞作品)のアートディレクションを手がけた山下リサさんにオファーしました。
鏡: まさに山羊座の「社会的評価」を象徴するアクションでしたね。
――そして結果は大ヒット御礼。ぶさにゃん先輩。に、導かれましたね。
『月と太陽の性格事典』で、『必死すぎるネコ』の発売日だった2017年9月15日を見てみたら、面白い一文を発見しました。
新しい意見は、まだ一般的ではないというただそれだけの理由で、必ず疑われ、たいてい反対される
――ジョン・ロック
沖: あの表紙のことだよね……。猫の写真集なのに、猫の顔が見えていない、しかも地味なあの写真を使うことには、賛否両論ありましたよね。かなり賭けでした。
鏡: 沖さんの誕生日のページにはこんな言葉もありますよ。
●あなたの最大の長所
真理と正義の飽くなき探究者:自分の信じることのためには誠心誠意を尽くす:社会的な正義(以下略)
鏡: 軸はブレないんだけど、空腹を満たすためには人にもなつく猫のような、どん欲な面もある――やっぱり「人なつこい一匹狼」、つまり猫ですね(笑)。
沖: なんだか、ぼくの猫写真家としての歩みを「答え合わせ」しているようで、すごく楽しいです。
鏡: はい、占いは先のことを予測するほかにも、これまでを振り返って自分の行動や出来事の意味付けをするという使い方をするのもいいと思いますよ。
沖: いや~、自分の人生で、まさか鏡さんに分析していただける日が来ようとは! ぶさにゃん先輩。ありがとう! 鏡さん、ありがとうございました!
プロフィール
鏡リュウジ(かがみ・りゅうじ)
占星術研究家・翻訳家。国際基督教大学卒業、同大学院修士課程修了(比較文化)。占星術の心理学的アプローチを日本に紹介し、従来の「占い」のイメージを一新。占星術の背景となっている古代ギリシャ哲学や神話学、ヨーロッパ文化史等にも造形が深く、日本の占星術シーンをつねにリードしている。平安女学院大学客員教授。京都文教大学客員教授。東京アストロロジースクール代表講師。
著書に『鏡リュウジの占星術の教科書ⅠⅡⅢ』『占星術の文化誌』、訳書にハーヴェイ夫妻著『月と太陽でわかる性格事典』、ヒルマン著『魂のコード』、グリーン著『占星術とユング心理学』等多数。責任編集をつとめたユリイカ増刊号『タロットの世界』は学術的アプローチが話題となる。
沖昌之(おき・まさゆき)
猫写真家。1978年神戸生まれ。家電の営業マンからアパレルのカメラマン兼販売員に転身。初恋のネコ「ぶさにゃん先輩。」の導きにより2015年に独立し、『ぶさにゃん』(新潮社)でデビュー。猫専門誌『猫びより』の「必死すぎるネコ」など連載や著書多数。2017年刊行のベストセラー『必死すぎるネコ』、2019年『必死すぎるネコ〜前後不覚篇〜』、2021年『イキってるネコ』、2022年『必死すぎるネコ〜一心不乱篇〜』(すべて辰巳出版)はシリーズ累計8万部を超える。
【関連書籍】
『月と太陽でわかる性格事典』
増補改訂版
チャールズ・ハーヴェイ・著
スージー・ハーヴェイ・著
鏡リュウジ・翻訳
&books
『必死すぎるネコ』
『必死すぎるネコ~前後不覚篇~』
『必死すぎるネコ~一心不乱篇~』
沖昌之・著
辰巳出版
撮影/寺田須美
取材・文/小林裕子