産婦人科医の髙橋怜奈さんが監修する『産婦人科医が教える みんなのアソコ』から、一部抜粋してお届け。第3回は「つらい生理は我慢しなくていい」。これまでの常識や思い込みを捨て、よりよい生理ライフを送りましょう。
高橋怜奈先生がYouTubeで本書を紹介してくださいました!
つらい生理は我慢しなくていい
生理は重い、軽いで表現されることがあります。「重い」が指す内容は広く、下腹部が痛い、経血の量が多い、ひどい腰痛や頭痛がある、お腹が張る、だるい、イライラ、憂うつ……などなど。一方の「軽い」は、生理ではない日と変わらない体調、気分で生活できるという意味ですが、実はこちらが〝普通〞なのだといわれたら、みなさんどう思うでしょうか。
生理が軽い人の話は、あまり共有されません。それに対して、重い人同士は共感し合いますし、メディアでも「多い日も安心」と謳われる生理用品や鎮痛剤などの広告をよく見ます。
親などから「みんなそうなのよ」といわれた人もいるでしょう。あらゆるところから「生理=つらい」と刷り込まれると、「そんなものだ」と思い込みますし、それが毎月つづくと「これが私の体質」と受け入れるようになります。
けれど医学的には、生理は軽いのが〝普通〞で、ふだんと同じように活動できるのです。生理にともない身体的または精神的につらい症状があれば、それは月経困難症と診断されます。
「生理は病気じゃないのに?」「大げさな病名」と感じられるかもしれません。
たしかに生理そのものは病気ではありませんが、痛くて起き上がれない、受験など大事な行事でいつもどおりのパフォーマンスを発揮できないといった状態は、決して〝普通〞ではありません。婦人科にかかれば治療によって改善できるものです。
昔の女性は、生涯で生理を50回しか経験しなかった!?
生理は毎月のことなのに、それによって女性の身体に不都合が出るのは理不尽だと感じられるかもしれません。しかし歴史上、生理は「毎月あるもの」ではなかったのです。
100年ほど前まで女性のライフスタイルは、初潮から数年後には出産し、その後も何人もの子を産むのが主流でした。妊娠中と授乳中は生理が止まり、よって子宮内膜も厚くなりにくいのです。
昔の女性が生涯に経験する生理は50回ほど、子どもの数が少ない現代女性は450回ほど、とする説もあります。
ピルを服用して、生理に振り回されない日々を!
生理前も生理中もアクティブに過ごすための選択肢のひとつが、超低用量ピルと低用量ピルです。「経口避妊薬」ともいわれますが、避妊だけでなく、月経困難症や過多月経、PMS、PMDDが緩和されるなど、女性にとってたくさんのメリットがあります。
ピルとは、2種の女性ホルモン「エストロゲン」と「プロゲステロン」を少量ずつ含む錠剤で、服用すると身体が「ホルモンが出ている」と感じ、それ以上分泌させないために卵巣の機能を休止します。排卵が止まるので妊娠しません。
ピルを飲みつづけると、子宮内膜が薄くなります。生理痛の原因となるプロスタグランジンは、子宮内膜が厚くなるほど多く出るので、薄く保たれれば生理痛が緩和します。また、経血量も減ることから、過多月経に悩む人にもピルがすすめられます。出血がほぼなくなる人もいます。
また、子宮内膜症は経血の逆流が原因とされているので、経血が減るとその予防になります。さらに、約28日周期で増減していたエストロゲンやプロゲステロンの分泌量がピルの服用により常に一定に保たれるため、ホルモンの分泌量が変動することで起きるPMSやPMDDが緩和されます。
近年はピルのオンライン処方サービスも増えましたが、子宮内膜症や子宮筋腫といった病気は、オンラインでは診断はできません。一度は婦人科にかかり、必要があれば内診や超音波検査などで子宮や卵巣の状態を診てもらったうえでピルの相談をしましょう。
近年はジェネリックのピルも増えており、1カ月1000円以下のものもありますし、クリニックによっては「学割」をしているところもあります。
一度入れれば5年間持続! ミレーナのメリット
月経困難症や過多月経対策として注目されているのが、ミレーナ®です。
子宮内に挿入し、プロゲステロンを5年間かけて少量ずつ持続的に放出する器具で、婦人科で挿入してもらいます。
子宮内膜が厚くなるのを抑えるので過多月経が緩和され、痛み物質が出にくくなるので生理痛も改善が見込めます。子宮内膜が薄いと受精卵が着床しづらいので避妊にもなります。逆に妊娠したくなったときは、婦人科で除去してもらいます。
ミレーナ®は子宮内膜にだけ働きかけるので、ピルの副作用が心配な人や、服用できない人も使用できます。ピルの飲み忘れが心配な人にも適しています。
挿入時に痛みを感じる人も多いですが、処置は3〜4分で済みます。出産経験がない人には装着しないポリシーのクリニックもあるようなので、事前にチェックしておきましょう。実際は出産経験の有無は関係ありません。
費用は、前後の検査もあわせて1万5000円程度。これで5年間持続できるのですから、最も安価な月経困難症、過多月経対策です。
最後に、黄体ホルモンを内服するホルモン治療も知っておきましょう。子宮内膜を薄くするため、ピルやミレーナと並んで月経困難症治療の選択肢のひとつに数えられます。ピルのように血栓リスクがなく、ミレーナのように挿入する必要もありません。ただ、飲みはじめに不正出血があることが多いですが、そのうちおさまります。
ピルもミレーナも自分主体で決めよう
「親からピルはダメだといわれた」という声は少なくありません。世代が上になるほどピルについて誤解している人が多く、心配から反対されることも多いようです。
自分の身体のことを決めるのは、本来自分だけです。
しかし費用や保険の心配もあるので、可能であれば一緒に病院にいき医師から説明を受けましょう。最新のピル事情を知れば反対しなくなるケースもあります。
また、パートナーがピルやミレーナ®について快く思っていないため、使用を迷っているという人もいます。
生理でつらいのは、パートナーではなく自分自身。生活の質を向上させることは、パートナーへの裏切りにはなりません。
本書には他にも、デリケートゾーンのにおいやかゆみ、脱毛、セックスの疑問など、女性特有のお悩みの原因と対処法をたくさん解説しています。インターネットですぐに検索できる時代だからこそ、「正しい情報」にアクセスしてほしい――『産婦人科医が教える みんなのアソコ』には、女性が自分の身体を正しく知り、自分の身体を肯定できるように、大切な情報がギュッと詰まっています。
『産婦人科医が教える みんなのアソコ』
髙橋怜奈・監修
竹井千佳・イラスト
辰巳出版
定価1,650円(本体1,500円+税)
A5判 160ページ
【監修】髙橋怜奈
(イラスト 竹井千佳)