祝!ご入学!
今日からあなたもPTA会員です!!
――ちょっとまって、それ本当!?
PTAは親の義務と思われがちですが、じつは日本全国すべてのPTAは入会も退会も任意です。知らぬ間に入会させられ、労役を課されるその前に、PTAの基本情報を押さえておきましょう。長年PTAについて取材を続けるライターの大塚玲子さんによる“PTA改革のバイブル”『さよなら、理不尽PTA!』より一部抜粋してお届けします。
PTA改革・適正化を考える前に、そもそもPTAってどんな組織なの? ということを、ざっと確認しておきましょう。「実はよく知らない」という人も意外と多いかもしれません。各PTAごとに違いもありますが、現状はおおよそ、こんな感じです。
PTAと学校はまったくの別団体
PTAは、その名称から「保護者(Parent)と教職員(Teacher)が、子どもたちのために協力する会(Association)」と理解されています。
PTAは学校との線引きがあいまいで、よく「学校の一部」のように誤解されていますが、本当は学校とは全く別の団体です。先生や職員さんたちも大体会員になりますが、ほぼ会費を払うのみで、活動は保護者がメインです。
学校はPTAという他団体に対し、お手紙の配布や回収を代行してあげたり、施設の一部である空き教室を無償で貸してあげたりして、優先的な扱いをしています。これはPTAが「その学校に通うすべての子どものため」に活動する、公共性のある団体だからであり、こうした特別な扱いを認める校長先生には、PTAのあり方に目を配る責任があると考えられます。
すべてのPTAは入会も退会も自由
PTAは現状、保護者も教職員もいつの間にか会員にされることが多いため、「必ず入らなければならない団体」のように思われがちですが、実は入会も退会も自由です。PTAの加入は任意であり、入ることを義務付けるような法的根拠は一切ありません。
ですから本当は「入らない」とわざわざ言う必要もなく、「入らない理由」を告げる必要もありません。駅前のスポーツクラブの会員にならないことや、その理由について、わざわざスポーツクラブに言いにいかないのと同じです。スポーツクラブに限らず一般的な団体は、本人の申し出がないのにその人を勝手に会員にすることはないからです。
私たちは通常何かの会に入るとき、その会の趣旨やルール、会費等を理解したうえで、入るか否か判断します。ですがPTAは現状、ほとんど情報がないまま、且つ判断する機会も与えられないまま、会員とされることが珍しくありません。
PTAの始まりはボランティアだったはずが……
そもそも日本のPTAがどんなふうにできたかについても、確認しておきましょう。
PTAはもともと、米国で誕生したものです。19世紀末、2人の母親が始めた「母親の会」がもとになったといわれています。がもとになったといわれています。
日本にPTAができたのは戦後です。GHQが、文部省を通して全国の学校にPTAをつくらせたのです。このとき、GHQの担当部局であるCIE(民間情報教育局)は、日本の大人たちに民主主義を学ばせることを意図し、戦前の「学校後援会」(「寄付」やお手伝いで学校を支える団体)からの脱却をはかったようですが、現状を見ると、残念ながら狙い通りにはいかなかったようです。PTAはできて間もない頃から、「学校後援会の看板のかけ替え」という指摘を受け続けてきました。
加入方法も、民主的とは言いがたい形でスタートしました。米国のPTAは「ボランティア」、つまり参加したい人が参加する「自主的な活動」でしたが、当時の日本にそんな発想はなかったのでしょう。現場では自ずと、昔から日本にあった「隣組」や「学校後援会」のように、「そこにいる人は、全員必ずやるもの」として始まったのでした。
あとで説明しますが、日本のPTAの最大の問題点である「強制」「義務」という性格は、日本でPTAができたこのときから、既に含まれていたのです。
昭和、平成、令和と時代が移ろうなか、PTAの問題点は何度も指摘されつつ、根本的にはあまり改善がありませんでした。ここ20〜30年は、少子化や専業主婦世帯の減少に伴って「活動の担い手」が減少し、より「強制」の性格を強めてしまった面もあります。
しかし、10年ほど前から新聞やテレビで、強制加入等の問題がたびたび報じられるようになり、最近ようやく状況が変わり始めた印象もあります。
今が正念場かもしれません。
次に、従来型のPTAの問題点を確認していきましょう。
これまでは「当たり前」のこととして見過ごされてきたアレもコレも、「PTA以外の団体でやったら大問題」ということが、いろいろあるのです。
さよなら、理不尽PTA!
~強制をやめる! PTA改革の手引き~
著・大塚玲子
巻頭漫画・おぐらなおみ
辰巳出版
大塚玲子
ノンフィクションライター、編集者。PTAなどの保護者組織や、多様な形の家族について取材、執筆。著書は『ルポ 定形外家族』(SB新書)、『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』(太郎次郎社エディタス)ほか。共著は『子どもの人権をまもるために』(晶文社)、『ブラック校則』(東洋館出版社)など。東洋経済オンラインで「おとなたちには、わからない。」、「月刊 教職研修」で「学校と保護者のこれからを探す旅」を連載。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。