産婦人科医の髙橋怜奈さんが監修する『産婦人科医が教える みんなのアソコ』から、一部抜粋してお届け。第1回は「なんでアソコって呼ぶんだろう?」。自分の身体のことなのに、見たこともない人が多い“不思議”に迫ります。
自分の身体なのに知らないところがある不思議
女性のアソコは「ミステリアス」と表現されることがよくあります。日本語でいうなら、神秘的、または不可解。たしかに「私のアソコはこんな形をしていて、こんな色で、こんな働きをしているんです!」とハキハキ説明できる女性は多くありません。
大人の女性でもそうです。「自分のアソコを見たことがない」という人が多く、「汚いからあまりさわらないようにしている」という声もよく聞きます。
アソコが具体的にどこを示すのかは定かではありません。ショーツで覆われているところ全体を指していう人もいれば、腟口やクリトリスといった場所をピンポイントで示したい人もいるでしょう。それは当然、状況や文脈によっても変わります。
なぜミステリアスなのか。
ひとつは、身体の構造からのものでしょう。女性のアソコは脚と脚のあいだに隠れていて、日常生活で自分のアソコが目に入ることはありません。見るなら鏡が必要ですし、銭湯や温泉でも脚が閉じられていれば他人のそれを目にすることはありません。
病院で不調を訴えたくても どう伝えていいかわからない
そして、アソコについて話すことも、知りたいと思うことも長らくタブー視されてきました。同時に、生理やセックスといったアソコのまわりで起きることもタブー視されています。〝普通〞が何かわかりにくいのです。
自分のアソコがどんなだかわからない人も、人にそこを見せることはあります。セックスをする相手に、あるいは婦人科の医師に。どう思われているのだろうと、いたたまれない気持ちになったことのある女性は少なくないでしょう。それによってセックスを楽しめなくなったり、婦人科にかかることをためらったりもします。
アソコについて知りたくても、誰に聞いていいかわかりません。いまでは、インターネットでなんでも調べることができます。アソコについて検索したら、アダルトサイトばかりが出てくる、生々しい画像が出てきて思わず目をそらしてしまった、というのもよくある話。自分のアソコとは違う気がする、でもよく見たことがないから何がどう違うのかわからない……。
思い切って知ってみよう タブー意識を捨てるために
アソコは、「開けてはいけない」とされていたパンドラの箱のようなものかもしれません。開けないうちは、中に何が入っているかわからなくて怖いし、「いやらしい」「卑猥」といった世間でいわれているイメージを信じてしまいます。そうしてタブー化するのです。では、思いきって箱を開けたらどうでしょう。形や色やにおい、そして機能を知り、それが自分の身体の大事な一部だと実感できれば、もう怖くはなくなるでしょう。
自分のアソコを見よう!そういわれたら、どう思いますか? 「恥ずかしい」「なんだか怖い」と感じて、あまり積極的になれない人もいるでしょう。幼いころにアソコをさわって、大人から「やめなさい!」と叱られた経験がある人もいるかもしれません。アソコに興味関心をもつことを、理由もわからないまま〝いけない〞ことと刷り込まれてきた女性は少なくないのです。
しかし現在、世界中で実践されている性教育のガイダンスでは、5〜8歳で「内性器、外性器の重要な部分を明らかにし、それらの基本的な機能」を知るべきだとされています。
ひとつとして同じものはない 自分だけのアソコ
アソコを見るにあたり知っておいてほしいのが「ひとりひとり違う」ということです。顔が違い、髪質が違い、バストサイズやおへその形が違うように、アソコの形、色、アンダーヘアの生え方は人それぞれ。そしてどれひとつとして間違っているとか醜いとか悪いとかいうことはありません。アダルトコンテンツで女性のアソコを見たことがある人なら、それと違うと悩むかもしれませんが、違って当たり前。人の身体にまったく同じ〝部品〞がついているほうが怖いと思いませんか? 10人いれば10とおりのアソコがあって、どれも個性的。誰にも否定されることのない、自分の身体の大事な一部です。
本書では、「Vulva Gallery」と称して16とおりのアソコをイラストで紹介しています。
自分と似ていると思ったアソコが見つかるかもしれません。もちろん、なくても心配はいりません。人の数だけ違うアソコがあり、ヘアの生え方、割れ目の始まり、小陰唇はサイズだけでなくヒダの細かさ……すべて個性です。横から見ると、恥骨の高さも人それぞれ。この世に同じものはひとつとしてなく、「これが私」と思えるのではないでしょうか。
『産婦人科医が教える みんなのアソコ』
髙橋怜奈・監修
竹井千佳・イラスト
辰巳出版
定価1,650円(本体1,500円+税)
A5判 160ページ
【監修】髙橋怜奈
(イラスト 竹井千佳)