モヤモヤしながら生きてきた【第4回】祖母の死とケア労働|出田阿生
【第4回】祖母の死とケア労働 前の回でも触れたが、2023年秋、大好きな祖母が死んだ。 「余命わずか」の診断を受けて入院先から自宅に戻し、家で看取った。 キンモクセイが甘い香りをまき散らし、散り始めるまでのわずか10日間だった。 コロナによる面会制限が続く中、病院でひとりぼっちで死なせたくなかった。 とはいえ、仕事を休んでまで看取り介護をしたのには理由がある。 子ども時代、祖母が親代わりだったからだ。 我が家は母子家庭。私が7歳、2人の妹が5歳と3歳のときに両親が離婚した。 専業主婦だった母は実家に身を寄 ...
モヤモヤしながら生きてきた【第3回】家父長制クソ食らえ|出田阿生
【第3回】家父長制クソ食らえ 何気ない日常に、「家父長制」がひょっこり顔を出す。 つい最近、母方の祖母が亡くなったとき、おや?と思う体験がいくつかあった。 祖母を自宅で看取ることに 誤嚥性肺炎で入院し、あっという間に飲まず食わずになってしまった祖母。 点滴で命をつないでいたが、最大3カ月までという急性期病棟の入院期限が迫っていた。 次にどこへ行くか。今まで入っていた有料老人ホームは、痰(たん)の吸引や点滴ができないから無理。医療措置のできる施設に新しく入居することも検討した。だが、医師には「余命わずか」と ...
モヤモヤしながら生きてきた【第1回】立派な「男」になろうとしていた私|出田阿生
【第1回】立派な「男」になろうとしていた私 女としての人生を、モヤモヤしながら生きてきた。でもなんでモヤつくのか、長いこと分からなかった。それがこの5年ほどで事態は急変した。ほとんど「ない」ことにされていた女性への差別が、声を上げる人が増えることで「ある」と認識され始めた。その理不尽さに怒る空気が社会に広がった。大げさでなく「生きててよかった」と喜びをかみしめている。 私は一般紙で新聞記者をしている。おじさんと間違われがちな名前だが、女性だ。現在、働き始めて25年が過ぎたところだ。 ジェンダーをめぐる社会 ...
『師弟百景 “技”をつないでいく職人という生き方』 井上理津子×金井真紀 特別対談 「市井のひとの話を聞く〜ライフストーリーを描くということ」第4回
【第4回】初めての似顔絵は新宿ゴールデン街で ゴールデン街のママをして初めて似顔絵を書いた 井上 新宿ゴールデン街のお話もしたいですね。『酒場學校の日々 フムフム・グビグビ・たまに文學』(ちくま文庫)は金井さんの文庫になったばかりの本。 金井さんがいいご経験をされたのは、草野心平さんが新宿ゴールデン街に開いた酒場學校という5席ぐらいしかないお店です。そこでひょんなことからママをなさったんですね。そしてこの本を見て思ったんですが、なぜ、金井さんはこんなに絵が上手なんですか? 金井 絵を描くのは好きでもないし ...
『師弟百景 “技”をつないでいく職人という生き方』 井上理津子×金井真紀 特別対談 「市井のひとの話を聞く〜ライフストーリーを描くということ」第3回
【第3回】取材対象者が語る「嘘と真実」 インタビューをするときは「相手を好きになったらどうしよう」と思って行く 井上 金井さんの『世界はフムフムで満ちている』の中で「誰かにインタビューをするならとことん好きになって、愛してインタビューをしなさい」という言葉がありました。 金井 はい。森沢明夫さんという小説家をインタビューしたときに教えてもらった秘訣です。森沢さんは、もともとノンフィクションを書いていた人で、ものすごく取材する方なんですね。あるとき格闘家の密着取材をしていて、「つぎの試合は負けた方が読み物と ...
『師弟百景 “技”をつないでいく職人という生き方』 井上理津子×金井真紀 特別対談 「市井のひとの話を聞く〜ライフストーリーを描くということ」第2回
【第2回】書くことを仕事にしようと決めた瞬間 井上理津子は「タクシー運転手」になりたかった!? 井上 若いとき、われわれ一般人は遊び呆けてるじゃないですか。でも職人さんと弟子入りする人たちは、若い時期の何年かを捨てるというのも変ですが、それぐらいの覚悟でその世界に入ります。入るとそこが心地よくなるんですかね。取材をしていて私はお坊さんの世界に似ているなと思いました。金井さんはそれぐらい全部を捨てて、仕事に邁進したことはありますか? 金井 ないです!! 井上さんは? 井上 ないですね。金井さんは職人的な部分 ...
『師弟百景 “技”をつないでいく職人という生き方』 井上理津子×金井真紀 特別対談 「市井のひとの話を聞く〜ライフストーリーを描くということ」第1回
【第1回】井上さんの職人技は「しつこい取材」にあり 師匠と弟子の距離感で24時間いたら好きになっちゃうかも 金井真紀(以下、金井) 本日初めましてですが、私は以前から井上理津子さんにずっと憧れていました。この機会に感謝します。 井上理津子(以下、井上) 私も金井さんの本を拝読して、メロメロになりました。『世界はフムフムで満ちている 達人観察図鑑』 (ちくま文庫)を読みましたが、 目も耳もいい人という印象です。本の中に関西弁の職人さんが出てきます。関西弁は、関西出身者が書こうとしても難しいのに、一字一句間違 ...
大谷翔平選手の変化球が投げられるようになるかも!? 自分に合った変化球がわかる、習得できる『変化球を科学する「曲がるボール」のメカニズム』
工藤公康氏推薦! スポーツ選手の動作解析の研究を行っている筑波大学体育系准教授・川村卓氏と、プロ野球選手のパーソナルトレーナーを務めた井脇毅氏による『変化球を科学する 「曲がるボール」のメカニズム』を紹介します。 これからは、変化球をいかに効果的に使えるかが求められる時代 変化球の種類は一説によると20とも30とも言われています。 著者によると、ピッチャーは一人ひとり投げ方に特徴があり、その特徴である自分の球質を知ることで習得しやすい変化球や、その変化球を用いた効果的なピッチングができるようになるとのこと ...
『これからの時代を生き抜くための文化人類学入門』 奥野克巳×国分拓 特別対談 「ボルネオとアマゾン、森の民の生き方に学ぶ」第5回
【第5回】狩猟民は「死」をどう捉えているのか 死者との交歓 国分:NHKスペシャル「アウラ 未知のイゾラド 最後のひとり」では、アウレ、アウラと名付けられた二人のイゾラドのうち、生き残ったアウラを取材しました。アウラは他の先住民保護区で暮らしていますが、そこは3万人規模の街から60kmくらいと、比較的、都市部に近い保護区です。 奥野:アウレはすでに亡くなったんですね。病気でしたか。 国分:ええ、癌だったようです。 奥野:アウラのドキュメンタリーでは、死に対してどのように考えているのか、ということも描かれて ...
『これからの時代を生き抜くための文化人類学入門』 奥野克巳×国分拓 特別対談 「ボルネオとアマゾン、森の民の生き方に学ぶ」第4回
【第4回】文明化することの悲劇 文明を知った先住民は自殺率が高い 奥野:国分さんは、イゾラド以外の先住民、マチゲンガやグアラニーなど他の先住民たちについても、ドキュメンタリーの中で描いています。バルガス=リョサの『密林の語り部』でも描かれていますが、彼らは文明側の人間になっているわけですね。町に捨てられたゴミを採りにいくとか。 国分:今や、完全にそうですね。グアラニーの保護区は、割と大都市に近いところにあって、文明からの影響は大きく、それは悲惨とも言えます。道路ができれば、車さえあれば保護区から行き来がで ...
『これからの時代を生き抜くための文化人類学入門』 奥野克巳×国分拓 特別対談 「ボルネオとアマゾン、森の民の生き方に学ぶ」第3回
【第3回】文明に触れたことがない人々「イゾラド」 文明を知らない先住民との接触 奥野:「ヤノマミ」も大変面白かったですが、文明社会とは一度も接触したことない人々であるイゾラドを追ったドキュメンタリーも、凄いなとしか言いようのない作品でした。最初に川の向こう側に弓矢を持つイゾラドたちが現れたのを写した映像は、現地の人が撮影したものですか。 国分:番組も初めの方に出てくるものは集落の人が撮影しましたが、最後に出てくるシーンはNHKのカメラマンが撮りました。イゾラドと接触を続けている基地での撮影許可はたった3日 ...
『これからの時代を生き抜くための文化人類学入門』 奥野克巳×国分拓 特別対談 「ボルネオとアマゾン、森の民の生き方に学ぶ」第2回
【第2回】人間が「主語」ではない世界 マルチスピーシーズ人類学とは何か 国分:奥野さんの『これからの時代を生き抜くための文化人類学入門』に書かれている「マルチスピーシーズ」という考え方には、非常に共感します。ただ共感しつつも、人間と人間以外の存在全ての持続を目指すことは正しいと感じながら、どこかそれは無理ではないかとも僕は考えてしまう。やはり人間が地球を滅ぼして終わるに違いないという考えが拭えません。「マルチスピーシーズ」自体、もっと多くの人が知ってもいいと思うのですが、伝え方も難しいですよね。概念的な話 ...
『これからの時代を生き抜くための文化人類学入門』 奥野克巳×国分拓 特別対談 「ボルネオとアマゾン、森の民の生き方に学ぶ」第1回
【第1回】フィールドワークが持つ暴力性 人類学者のフィールドワークとドキュメンタリーの取材 奥野克巳(以下、奥野):国分さんとは今から12年前に一度、お会いしていますね。以前に勤めていた大学で、学生たちが「文化人類学研究会」というものを組織して、勉強会を行っていたのですが、国分さんが手がけたNHKスペシャル「ヤノマミ 奥アマゾン 原初の森に生きる」が放送されたのを機に、大学で国分さんをお呼びして、文化人類学者の池田光穂さんと対談をしていただきました。 国分拓(以下、国分):ご無沙汰しています。 奥野:12 ...
スクワットは意味がなかった……!? 1日10分から始められる、お尻に効果的なエクササイズをお教えします『お尻年齢リセット術』
3万人以上を改善してきたお尻の専門トレーナーである松尾タカシ氏が効果的なお尻のエクササイズを教えてくれる本『お尻年齢リセット術』を紹介します。 ヒップアップ目的にと行っていたスクワットは骨盤の傾きによって有効な人とそうでない人に分かれ、またバックキック(四つん這いの姿勢で片方の足を後ろに蹴り上げる運動)は実はお尻に負荷がかかっておらず、意味がないと著者はいいます。 本書では、しっかりお尻に負荷がかかる効果的なエクササイズを紹介しているほか、モチベーションもヒップも上がる、お尻を鍛えるメリットもたっぷり解説 ...
大人気女優も推し!日本一有名なハシビロコウ「ふたば」の魅力に迫る!――写真集『ハシビロコウのふたば』
ふたばは、静岡県の掛川花鳥園で暮らすハシビロコウ。今年、公開7周年を迎える女の子です。 ハシビロコウは子どもたちにも人気の鳥ですが、とくにふたばのファンは多く、女優の清原果耶さんもインタビューなどでふたばファンを公言しています。 なぜ、ふたばはこんなにも愛されるのか? その魅力に迫った写真集『ハシビロコウのふたば』をご紹介します。 ハシビロコウってこんなに表情豊かだったのか ハシビロコウといえば「動かない鳥」として有名で、鋭い眼光に、何を考えているかわからない無表情な面構えが特徴です。 しかし、ふたばは、 ...