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モヤモヤしながら生きてきた【第5回】「水着撮影会」問題を自分事として考える|出田阿生

【第5回】「水着撮影会」問題を自分事として考える 水着のサイズを定義するわけ 三角ビキニと呼ばれる水着がある。ブラジャーの部分が三角形になっているアレ。その三角形の底辺と高さが10センチ以上あれば、日本女性の乳房はだいたい隠れるらしい。 こんな数字を出してきたのは、「埼玉県公園緑地協会」。埼玉県から県営公園の管理運営を委託されている公益財団法人だ。おかたい組織が、なぜこんな計算を? その疑問に答えるには、「水着撮影会」から説明する必要がある。モデルやアイドルの水着姿を、一般の人がお金を支払って撮影するイベ ...

『これからの時代を生き抜くためのジェンダー&セクシュアリティ論入門』 三橋順子×北丸雄二 特別対談 「LGBTQ+…これからの世代に伝えたいこと」第1回

【第1回】セクシュアルマイノリティの現場から 二人の共通項は“現場主義” 三橋:私が北丸さんとお話するようになったのは、ここ3、4年のことです。ある忘年会があって、キッチンで次から次へとお料理を作ってる人がいました。どれも美味しいから、てっきりプロのシェフを呼んだのかと思ったら……それが北丸さん。だから初対面のあいさつは、「ごちそうさまでした、美味しかったです」でしたね。 北丸:あのときは誰も手伝ってくれなくて、ひとりで60人分ぐらい作ったんですよ。 三橋:その前からお名前は存じ上げていたんですけどね。 ...

事故物件の日本史【第2回】『源氏物語』の舞台は王朝心霊スポット〜河原院と二条院|大塚ひかり

第一章 なぜ『源氏物語』の舞台は事故物件ばかりなのか/後編 宇治十帖の舞台は広大な墓場 さて、主人公の源氏死後、その孫たちの物語を描いたのが「宇治十帖」と呼ばれる巻々だ。 その舞台となった宇治は、平安初期、 “わがいほは都のたつみしかぞすむ世をうぢ山とひとはいふなり”(私の庵は都の東南にあって鹿の住むような所だが、このように心を澄まして住んでいる。それを人は宇治山…憂し山…などと、この世をつらく思って遁世したと言っているらしい) と、喜撰法師に歌われて以来、“憂し”の意を込めた歌枕になった。 平安中期の『 ...

事故物件の日本史【第1回】『源氏物語』の舞台は王朝心霊スポット〜河原院と二条院|大塚ひかり

はじめに “凶宅”から福宅へ…事故物件に秘められる未来へのメッセージを探る 「大島てる」というサイトをご存知だろうか。事故物件を地図上に掲載したウェブサイトで、運営者のお祖母様の名前をとっているといい、運営者はイベント・執筆活動などもこの名で行っている。 サイトの存在を知った時、激しくテンションが上がったものだ。 なぜなら、古典文学には曰く付きの邸宅、いわば事故物件がけっこうあって、私はそれを長年ファイリングしていたからだ。 大河ドラマ「光る君へ」の主人公・紫式部の書いた『源氏物語』にしても、その舞台は当 ...

モヤモヤしながら生きてきた【第4回】祖母の死とケア労働|出田阿生

【第4回】祖母の死とケア労働 前の回でも触れたが、2023年秋、大好きな祖母が死んだ。 「余命わずか」の診断を受けて入院先から自宅に戻し、家で看取った。 キンモクセイが甘い香りをまき散らし、散り始めるまでのわずか10日間だった。 コロナによる面会制限が続く中、病院でひとりぼっちで死なせたくなかった。 とはいえ、仕事を休んでまで看取り介護をしたのには理由がある。 子ども時代、祖母が親代わりだったからだ。 我が家は母子家庭。私が7歳、2人の妹が5歳と3歳のときに両親が離婚した。 専業主婦だった母は実家に身を寄 ...

モヤモヤしながら生きてきた【第3回】家父長制クソ食らえ|出田阿生

【第3回】家父長制クソ食らえ 何気ない日常に、「家父長制」がひょっこり顔を出す。 つい最近、母方の祖母が亡くなったとき、おや?と思う体験がいくつかあった。 祖母を自宅で看取ることに 誤嚥性肺炎で入院し、あっという間に飲まず食わずになってしまった祖母。 点滴で命をつないでいたが、最大3カ月までという急性期病棟の入院期限が迫っていた。 次にどこへ行くか。今まで入っていた有料老人ホームは、痰(たん)の吸引や点滴ができないから無理。医療措置のできる施設に新しく入居することも検討した。だが、医師には「余命わずか」と ...

モヤモヤしながら生きてきた【第1回】立派な「男」になろうとしていた私|出田阿生

【第1回】立派な「男」になろうとしていた私 女としての人生を、モヤモヤしながら生きてきた。でもなんでモヤつくのか、長いこと分からなかった。それがこの5年ほどで事態は急変した。ほとんど「ない」ことにされていた女性への差別が、声を上げる人が増えることで「ある」と認識され始めた。その理不尽さに怒る空気が社会に広がった。大げさでなく「生きててよかった」と喜びをかみしめている。 私は一般紙で新聞記者をしている。おじさんと間違われがちな名前だが、女性だ。現在、働き始めて25年が過ぎたところだ。 ジェンダーをめぐる社会 ...

『師弟百景 “技”をつないでいく職人という生き方』 井上理津子×金井真紀 特別対談 「市井のひとの話を聞く〜ライフストーリーを描くということ」第4回

【第4回】初めての似顔絵は新宿ゴールデン街で ゴールデン街のママをして初めて似顔絵を書いた 井上 新宿ゴールデン街のお話もしたいですね。『酒場學校の日々 フムフム・グビグビ・たまに文學』(ちくま文庫)は金井さんの文庫になったばかりの本。 金井さんがいいご経験をされたのは、草野心平さんが新宿ゴールデン街に開いた酒場學校という5席ぐらいしかないお店です。そこでひょんなことからママをなさったんですね。そしてこの本を見て思ったんですが、なぜ、金井さんはこんなに絵が上手なんですか? 金井 絵を描くのは好きでもないし ...

『師弟百景 “技”をつないでいく職人という生き方』 井上理津子×金井真紀 特別対談 「市井のひとの話を聞く〜ライフストーリーを描くということ」第3回

【第3回】取材対象者が語る「嘘と真実」 インタビューをするときは「相手を好きになったらどうしよう」と思って行く 井上 金井さんの『世界はフムフムで満ちている』の中で「誰かにインタビューをするならとことん好きになって、愛してインタビューをしなさい」という言葉がありました。 金井 はい。森沢明夫さんという小説家をインタビューしたときに教えてもらった秘訣です。森沢さんは、もともとノンフィクションを書いていた人で、ものすごく取材する方なんですね。あるとき格闘家の密着取材をしていて、「つぎの試合は負けた方が読み物と ...

『師弟百景 “技”をつないでいく職人という生き方』 井上理津子×金井真紀 特別対談 「市井のひとの話を聞く〜ライフストーリーを描くということ」第2回

【第2回】書くことを仕事にしようと決めた瞬間 井上理津子は「タクシー運転手」になりたかった!? 井上 若いとき、われわれ一般人は遊び呆けてるじゃないですか。でも職人さんと弟子入りする人たちは、若い時期の何年かを捨てるというのも変ですが、それぐらいの覚悟でその世界に入ります。入るとそこが心地よくなるんですかね。取材をしていて私はお坊さんの世界に似ているなと思いました。金井さんはそれぐらい全部を捨てて、仕事に邁進したことはありますか? 金井 ないです!! 井上さんは? 井上 ないですね。金井さんは職人的な部分 ...

『師弟百景 “技”をつないでいく職人という生き方』 井上理津子×金井真紀 特別対談 「市井のひとの話を聞く〜ライフストーリーを描くということ」第1回

【第1回】井上さんの職人技は「しつこい取材」にあり 師匠と弟子の距離感で24時間いたら好きになっちゃうかも 金井真紀(以下、金井) 本日初めましてですが、私は以前から井上理津子さんにずっと憧れていました。この機会に感謝します。 井上理津子(以下、井上) 私も金井さんの本を拝読して、メロメロになりました。『世界はフムフムで満ちている 達人観察図鑑』 (ちくま文庫)を読みましたが、 目も耳もいい人という印象です。本の中に関西弁の職人さんが出てきます。関西弁は、関西出身者が書こうとしても難しいのに、一字一句間違 ...

大谷翔平選手の変化球が投げられるようになるかも!? 自分に合った変化球がわかる、習得できる『変化球を科学する「曲がるボール」のメカニズム』

工藤公康氏推薦! スポーツ選手の動作解析の研究を行っている筑波大学体育系准教授・川村卓氏と、プロ野球選手のパーソナルトレーナーを務めた井脇毅氏による『変化球を科学する 「曲がるボール」のメカニズム』を紹介します。 これからは、変化球をいかに効果的に使えるかが求められる時代 変化球の種類は一説によると20とも30とも言われています。 著者によると、ピッチャーは一人ひとり投げ方に特徴があり、その特徴である自分の球質を知ることで習得しやすい変化球や、その変化球を用いた効果的なピッチングができるようになるとのこと ...

『これからの時代を生き抜くための文化人類学入門』 奥野克巳×国分拓 特別対談 「ボルネオとアマゾン、森の民の生き方に学ぶ」第5回

【第5回】狩猟民は「死」をどう捉えているのか 死者との交歓 国分:NHKスペシャル「アウラ 未知のイゾラド 最後のひとり」では、アウレ、アウラと名付けられた二人のイゾラドのうち、生き残ったアウラを取材しました。アウラは他の先住民保護区で暮らしていますが、そこは3万人規模の街から60kmくらいと、比較的、都市部に近い保護区です。 奥野:アウレはすでに亡くなったんですね。病気でしたか。 国分:ええ、癌だったようです。 奥野:アウラのドキュメンタリーでは、死に対してどのように考えているのか、ということも描かれて ...

『これからの時代を生き抜くための文化人類学入門』 奥野克巳×国分拓 特別対談 「ボルネオとアマゾン、森の民の生き方に学ぶ」第4回

【第4回】文明化することの悲劇 文明を知った先住民は自殺率が高い 奥野:国分さんは、イゾラド以外の先住民、マチゲンガやグアラニーなど他の先住民たちについても、ドキュメンタリーの中で描いています。バルガス=リョサの『密林の語り部』でも描かれていますが、彼らは文明側の人間になっているわけですね。町に捨てられたゴミを採りにいくとか。 国分:今や、完全にそうですね。グアラニーの保護区は、割と大都市に近いところにあって、文明からの影響は大きく、それは悲惨とも言えます。道路ができれば、車さえあれば保護区から行き来がで ...

『これからの時代を生き抜くための文化人類学入門』 奥野克巳×国分拓 特別対談 「ボルネオとアマゾン、森の民の生き方に学ぶ」第3回

【第3回】文明に触れたことがない人々「イゾラド」 文明を知らない先住民との接触 奥野:「ヤノマミ」も大変面白かったですが、文明社会とは一度も接触したことない人々であるイゾラドを追ったドキュメンタリーも、凄いなとしか言いようのない作品でした。最初に川の向こう側に弓矢を持つイゾラドたちが現れたのを写した映像は、現地の人が撮影したものですか。 国分:番組も初めの方に出てくるものは集落の人が撮影しましたが、最後に出てくるシーンはNHKのカメラマンが撮りました。イゾラドと接触を続けている基地での撮影許可はたった3日 ...