【試し読み】待望の書籍化!やさしい言葉たちに、疲れた心がス~ッと軽くなる『あなたを全力で肯定する言葉』

コレカラの人気連載『あなたを全力で肯定する言葉』が書籍になりました!
15万部超ベストセラー『5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本』の著者・ひきたよしあきさんが、多種多様な生きづらさを抱えた人々に言葉の力で寄り添います。
広告マンとして高度経済成長期を駆け抜け、スピーチライターとして政治家や大企業のトップたちに指南しながらも、子どもと向き合い、大学で教鞭をとり、若い世代の悩みに耳を傾け語り合ってきた……そんな著者だからこそ紡ぎだす言葉たちは、一滴の水のように、乾ききった心にしみわたるでしょう。
発売に先立ち、書籍版『あなたを全力で肯定する言葉』から特別に内容を一部公開いたします。

書籍『あなたを全力で肯定する言葉』

【あなたを全力で肯定する理由】

広告会社で働きながら、10年近く大学で教鞭をとってきました。
毎年入れ替わる学生たち。
同じように見えて、コミュニケーションの方法が、少しずつ変わっています。
特にここ2、3年感じるのは、話し始める前に、“エクスキューズ”をつける人が急増していることです。

「人と話すのが苦手なもので」
「少しコミュ障入っているので」
「いつも支離滅裂になっちゃうんですけど」

これは学生に限った話ではありません。企業研修の講師に招かれたときも、小中学校の先生と話すときにも、先に言い訳する人が増えています。

「私は、ITが苦手でして」
「私、もう歳ですから」
「昭和の人間なもので」
と言ってから話す。
しかし、ほとんどの人が、話してみると何一つ問題はありません。普通に話せるし、話がわかりにくいわけでもありません。
「最初に『話すのが苦手』って言ったけど、うまく話せていますよ」
と言うと、驚いた顔をする。そして細かく手を振って、
「全然、そんなことありません。今もドキドキして、もう、ダメなんです」
といった反応が返ってきます。
本人は、「話すのが苦手」かもしれない。しかし、「相手に伝える力」は十分にある。
いちいち“エクスキューズ”を入れて、「厳しいジャッジ」を免除してもらおうとする必要が全くないのです。

「話すのが苦手」は、あくまで自分の判断。
きっと誰かと比較して、「私は、あの人と比べて、うまく話せない」 と決めつけているのでしょう。

自虐の言葉はあなたを縛る

子どもの頃、家に『家庭の医学事典』という分厚い本がありました。
面白半分に読んでみると、「肝臓を患うと、顔色が悪くなり、体に痒みが出て、だるくなる」なんて書いてありました。

これを読んだ途端、「あれ、そういえば今日は体が重いな」と思ったのです。
鏡を覗くと、前に比べて顔がドス黒い気がする。急に背中が痒くなってきた。
私の中で、「肝臓病かもしれない」という意識が芽生え、それからしばらく「肝臓病の私」というレッテルを自分に貼って暮らすはめになりました。医者の診断で決めるべき「病気のレッテル」を素人判断で貼ってしまったのです。

一度こうした「負のレッテル」を自分に貼ると、脳はせっせとその事実を証明しようとします。
「そういえば、昨日食欲がなかった」
「あ、あのとき太田さんから、『暗い顔をしている』と言われた」
なんてことが次々と思い出されてくる。
レッテルは、ますます強固になり、「肝臓病の私」は、“フリージングワード”(脳を凍らせて動かなくする言葉)となって自分を規定してしまいます。
人間といっても、動物。大切なのは命を守ることです。そのためには、「これは危険だ」「自分や仲間に危害を加えそうだ」といったネガティブな情報の方を優先するからです。

今は、この“フリージングワード”があちこちにあります。
ネットをひらけば「自己肯定感が低い」「コミュ障」「ひきこもり」「うつ」なんて言葉が出てきます。本来厳しく管理されるべき専門用語が、個人の解釈、偏見、わずかな体験談で語られています。中には、「自己肯定感の高低」を測るテストや占いめいたものまであって、「私はこれにあてはまる」と思ってしまいます。

自分で自分に貼りつけた「レッテル」を剝がそう

しかし、「自虐の言葉」は、時に毒矢となって、自分の心に刺さってきます。
人と話す前に“エクスキューズ”をつけてしまうのは、さまざまな情報を通じて、自分に毒矢を向けてしまった証明のように思えるのです。

本書には、多種多様な「お悩み」をもつ人々が登場します。

「自己肯定感が低い」「コミュ障」「不寛容」「ネガティブ思考」「口下手」「性格が悪すぎる」「コスパが悪い」「ダメ上司」「社畜」「問題意識が強すぎる」「本気で人を好きになれない」「母親失格」「モテない男」「都合のいい女」「親を大切にできない」「若い子に勝てない」「アピールポイントがない」「老害」「変われない」「夢がない」「向上心がない」……

あなたにあてはまるものもあるのではないでしょうか。
この「お悩み」のように自分の性格、気質、状況を「言語化」すると、自己分析をした気持ちになれるし、人にも自分のことを手っ取り早く伝えられます。自虐めいて自分を表現することで、相手と適度な距離感を保ちたいという潜在意識もあるかもしれません。
しかし、このような「レッテル貼り」こそが、悩みを解決するときの大きな弊害になると私は思っています。

あなたを全力で肯定します

私は、自分に「負のレッテル」を貼ってしまった若者を、たくさん見てきました。小学生に向けた授業もやっているので、子どもや保護者の方にも数多くいることを知っています。
働き盛りの人たちのなかにも、こうした空気が蔓延しています。
自信のない人、自己肯定感の低い人、コミュニケーションが苦手な人などを、言葉の力で、なんとか応援したい。
そう思って、たくさんの本を書き、あちこちで講義もしてきました。

その結果わかったことは、海の底でうずくまっている人が海面に出るまでいっしょに泳いでくれる人の大切さ。その存在を全力で肯定し、「負のレッテル」を剝がしてくれる「言葉」のありがたさです。
私自身、こうした「言葉」によってシビアな時期を乗り越えてきました。
及ばずながら、苦しんでいる人といっしょに海面を目指したこともあります。

そんな経験を生かしながら、「言葉」の力で、あなたをサポートさせてください。
海面にぱっと顔を出し、新鮮な空気と、青い空をあなたといっしょに見られるように、あなたを、全力で肯定する「言葉」をお届けします。

 

あなたを全力で肯定する言葉
著 ひきたよしあき
イラスト 江夏潤一
発行 辰巳出版
発売 2024年7月17日

▶Amazonで購入する
▶楽天ブックスで購入する

ひきたよしあき

(株)SmileWords代表。大阪芸術大学放送学科客員教授。早稲田大学法学部卒業。元(株)博報堂クリエイティブ・ディレクター。政治家、行政、大手企業のスピーチライターとして活躍し、現在は企業や各種学校をはじめ、JFA(日本サッカー協会)、浄土真宗本願寺派などでも講義。世代間のコミュニケーションギャップ、価値観や言葉遣いの違いなどを分析し、コミュニケーション能力を高める方法を伝授している。教育WEB「Schoo」、朝日小学生新聞WEB「みんなをつなぐ新聞」などでも人気を博している。『5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本』(大和出版)他著書多数。

Facebook HP 

(イラスト 江夏潤一)

-特集