いまいる場所になじむことができず、不安やとまどいを感じると、心やすまる居心地のいい家に帰りたくなる。
自分を守ってくれる温もりあふれる人と空間を誰もが必要としているのだ。
わたしが綴る言葉たちが、あなたのあたたかい避難場所となり、心と体がゆっくり休まりますように。――クォン・ラビン
【第6回】わたしへ
わたしへ
わたしのことを、まるごと一番愛することができるのは、わたし自身だ。
他の人を理解して認めようとする前に、まずは自分の気持ちを考えて。
「ノー」と言うべき時に言えるのは、心が健康だからこそ。断ることを恐れないで。
何が好きで、何が嫌いなのか。自分に問いかけてみて。
自分にやさしく親切に。自らを否定して地獄に追いこめば、自分がつらくなるだけ。
ポジティブな心がまえを続ければ、自然と「わたしの言葉と行動」が生まれてくるから。
大切なのは、運動と瞑想。
運動をして汗を流しシャワーを浴びると、さわやかな気分になる。
そのまま瞑想をして、頭を空っぽにしてもいいし、心の奥深くに入り込み自分を省みてもいい。
幸せになろうと努力したり、自分を急き立てたりしてはダメ。
余裕がなければ、大きな幸せにも不安を感じ、小さな幸せにも満たされない。
ありのままの気持ちを受け入れれば、心はもっとしなやかに強くなる。
人間関係
甘ければ飲みこみ、苦ければ吐き出す。
それが人間関係を保つコツ。
過ちと修復の連続
自分を追い込み、ネガティブな言葉で苦しめ責めたら、何かが変わるのだろうか。
選ばなかった道を悔やむのは、自然なこと。でも、後ろだけを見つめて生きるのは、もったいない。
あなたの前には 澄みわたる未来が広がっているのに。
あの時あなたが選んだ道には、幸せも、経験も、学びもあったはず。
あの時感じた気持ちを忘れないで。
逃したことを後悔するより、選んだことで得た幸せを大切にしたほうが、もっといい。
過去の自分を憎むのではなく、人生を楽しんで。
感じたこと、経験したこと、見たこと。そんなすべてに幸せを感じるだけでも、人生はとても満たされる。
自分を追い込み、自分を憎んだわたしは、そうしても何も得るものはないと気づいた。
それでなくても生きていくのは大変なのに、自分自身を責めないで。
自分をもう少ししっかりと見つめ、大切に。
過去の過ちを受け入れれば、もう一歩、新しい自分に近づくことができるから。
人生は過ちと修復の連続。だから、自分のことを苦しめないで。
(イラスト チョンオ)
著者プロフィール
クォン・ラビン
1994年、韓国生まれ。9歳のときに両親が離婚。そのことがきっかけで、世間では「あたりまえ」と思われている多くのことに疑問を持ちはじめる。2020年、自分と同じような思いを抱える読者に寄りそう言葉を届けたいと、デビュー作となる『家にいるのに家に帰りたい』(&books/辰巳出版)を刊行。
永遠なる紫の月——あなたはきっと、わたしとこの言葉たちが好きになる。
Instagram桑畑優香
翻訳家、ライター。早稲田大学第一文学部卒業。延世大学語学堂、ソウル大学政治学科で学ぶ。「ニュースステーション」のディレクターを経てフリーに。多くの媒体に韓国エンターテインメント関連記事を寄稿。主な翻訳書に『BTSを読む』(柏書房)、『BTSとARMY』(イースト・プレス)、『BTSオン・ザ・ロード』(玄光社)、『家にいるのに家に帰りたい』『それぞれのうしろ姿』(&books/辰巳出版)ほか多数。
連載一覧
- 第1回 幸せになれる魔法の呪文
- 第2回 「だいじょうぶ」が「本当にだいじょうぶ」になるまで
- 第3回 幸せになるための7つの方法
- 第4回 緊急連絡先を書いてください
- 第5回 あなたの記憶
- 第6回 わたしへ
- 第7回 不幸と別れから逃げられるなら
- 第8回 あなたは海、宇宙、あるいはそれ以上
- 第9回 時間を歩く