2023年M-1グランプリにて、初代王者・中川家以来のトップバッターで優勝という、圧倒的強さを見せつけた超新星・令和ロマン。ボケを担当し、自他ともに認める「お笑いオタク」の髙比良くるまが、その鋭い観察眼と分析力で「漫才」について考え尽くします
【第3回】 「シームレス化が進む新時代の笑い」お笑い第8世代とは
コレカラをご覧のみなさん。くるまです。
先日、文化祭で共演したウエストランド井口さんに「全メディアでお笑い語りまくり人間」と言われたくるまです。
チャンピョン(※1)から名誉ある称号をいただいたということで、今回もメディア界のチャンピョン・「Webマガジン」にてお笑いを語りまくり捲し立て、いつか共通テストの現代文に採用してされてやろうと思います。
(※1 あんまり無い書き方のチャンピオン)
さてキングオブコントも佳境、M-1も1回戦動画が次々話題になり、ネット上でも「今年は誰が来るんだ」の予想合戦。
次世代のスターを先に見つけたい!
前から知ってましたと言いたい!!
言い過ぎるとウザがられるから、心の内でこっそり笑いたい!!!
皆さんそう思ってるんじゃないでしょうか。
少なくとも僕はめちゃくちゃ思っています。
そこでふと思ったのが、こうやって次世代と言った時、数年前にはよく使われてた言葉、「第8世代」。
元々は霜降り明星(※2)・せいや御大が作った「第7世代」があり、そのブームの最中、「NEXT第7」や「第8」という括りが現れ、僕らも2年目の2019年辺りに、そういう取材を受けることがちょいちょいありました。
しかし結局「第8世代」という言葉が流行ることがないまま第7ブームは終了…。
ではもう「第8世代」は現れないのか、それとも今年の賞レースから出てくるのか、今回も過剰に考えて行きたいと思います。
(※2 「霜」は「雨」に「木」に「目」)
まず一般的に定義されている、お笑いの世代分けをWikipediaで見てみましょう。
Wikipedia・日本お笑い史
はいはい。ざっくりまとめると、
演芸ブームの第1、
漫才ブームの第2、
テレビ番組に進出して行ったダウンタウンさんらの第3、
めちゃイケやボキャ天(※3)などそのバラエティも多岐に渡って行った第4、
2000年以降の賞レースとネタ番組が中心となる第5、
コンプラの厳格化、小説や情報番組などネタ以外への飛躍が起きる第6、
そしてダウンタウンさんの影響を受けず新しい価値観の第7、その狭間で苦しむ6.5、
みたいな感じ。
うーん、まあぶっちゃけ第5〜7ってみんな一緒だと思うんですよね。第7より後輩から見ると。
そもそも第5も6も「第7」という言葉が一人歩きした結果、逆算で定義してみたらこういう風に分かれたってだけで。
何が一緒かって、やっぱり第5世代にはテレビを中心とした価値観があって、そこに出るために第4までは劇場の人気だったりテレビマンの評価だったり、軸が不透明だった。
そこにM-1やKOCなどの賞レースが出来たことで芸人の本分である「ネタ」を磨けば、余計なことをせずにそれだけで売れることが出来る。それが1番カッコいい。それに伴ってネタ番組がたくさん出来たけど本線は賞レース、優勝出来なくても何度も決勝に行けば芸人間の評価は高まる。Players' Playerであることが美徳。
これが第6的な時期=2010年以降になると、M-1の終了やネタ番組の減少、毎年生まれるチャンピオンで飽和して上が詰まってきても価値観は変わらず、「優勝してんのに何で売れない」「何回も決勝行ってんのにどうして呼ばれない」、また第4世代の不透明な厳しさに直面しながらもがいていた中で、偶然生まれた2018年の20代チャンピオンたち(濱田祐太郎さん、ハナコさん、霜降り明星さん)、そしてその周りにも20代の人気者、そこに求心力が生まれ、番組の枠が増え、またシンプルな競争が始まり、力を貯めていた第6組が今リードしている、って印象です。
こう書くと環境的には第5,6,7と変わっているんですけど、僕が言いたいのは「芸人側はずっと一緒の気持ち」ってとこですね。
賞レースで売れてったら先輩の背中を追って、冬の時代もそこを目掛けて頑張り続けた。いつかあの世界に、あの第5世代の世界に、という意思で動いていたでしょう。もちろん、もちろん例外はいますけど、テレビ側というハードは変わって行ったけど、芸人いうソフトは変わらなかった。
(※3 丸亀製麺の裏メニューではない)
じゃあ次の世代にはどうやって移行していくのか。
これは「ネタの消耗加減」で決まってくると思いますね。
そもそも第3から第4に移った時というのは、第2での漫才、第3でのテレビコントを経て、ある程度ネタを出し尽くした、パターンが割れたことがロケ番組増加に一役買ってるのかなと。
その1990〜2000年まで10年くらいの間でお笑いファンのメイン客層が入れ替わり、昔のネタを知らない子たちが新鮮にネタを見てくれたからこそ、一気に火がついた。
もちろんネタは常に発明されているんですよ。その時代を切り取ったキャラクターが出てきてるんですけど、どうしても根本のテクニックというか、いわゆる三段オチ、とか天丼、みたいな根底は共通してるし、それって少しずつお客さんに共有されていくと、どうしても最初のインパクトは薄まって行く。
それがM-1開始と共にリフレッシュされて、10年やったらまた少しずつ慣れられてM-1終わって、8年くらいかけてまたお客さんが入れ替わり、まあ全入れ替えとかじゃないと思うんですけど昔お笑い見てた人とかも戻ってきて、まあある程度時間が経ったから忘れてくれているんですよその方々も。
要するに今のブームが落ち着いたらまた皆さんに「ネタを忘れていただく時間(※4)」が必要ということで。なんで大体10年前後で回ってると考えたら、次は2027年くらい?あと3、4年で一旦今のお笑いブームは落ち着くんですかね。んー、なんかそう考えるとめっちゃ続くじゃんと思っちゃうな。
(※4 ZAZYに見慣れていただく時間 の反対語 )
あとコレ、もう一個テレビ側の都合で考えると、ネタがめっちゃ流行ってる時ってネタ番組やっとけば芸人が考えてそれをやって成立するんで、もちろん選ぶセンスはいるでしょうけど、そうなると芸人側が持ち上げられる感じになりますよね。
最近のお笑い番組とかは自分が出ていても、周りから聞いてもそういうのがスゴく多いと思います。「芸人さんをリスペクトしているので何でも好きなことをやってください」みたいな形式。
でコレをやって、ネタが飽きられてくると、何かしらの演出が必要になってくる、それが過去で言うと第4の電波少年とかロンハーみたいな形なんでしょうね。それがまたネタが流行ると第5でシンプルになっていく。
でもまあ昔はテレビの力が今より強かったですから、優遇ってほど持ち上げられる訳ではないか。それだと消耗のスパンは早まってるかもしれないですよね逆に。自由な分、各自が100%を出してるワケだから。
業界の慣習や不条理が無い分、誰も燻らず全力で出し尽くしている。
そうなると2025年くらいに転換?ちょっとリアル。
となると、冬の時代を指揮するハードにフィットする芸人が第8世代、ということになるのでしょうか。
第5→6の例に倣うとオードリーさんやハリセンボンさんや、ネタ+キャラクターで演出しやすい人たち。
でもテレビでその勝負を続ける人は第7までの人たちだし、芸人側も知識が蓄積されているんで、ネタを出し切った皆さんもそう簡単に席は譲らない。
そうなりゃテレビ以外の場を自分で用意してハードを作れる人たち、がまとまって出てきた時にちゃんと「新世代」という称号が付くんですかね。
今だってYouTubeやってます、TikTokやってます、ってのはあるけども、バラバラじゃなくそこにある程度のコミュニティを作られて行った時。
それも芸人同士でコラボする何かとかのレベルじゃなくて、今って本当どんどん「芸能人」みたいな垣根は無くなってきてるので、そういう人脈みたいな部分と、ネタじゃない、芸人以外もミックスできる技術を持ってるグループが数組現れたら。
いやもしかしたらそこに箔が付くようなものがあると第7のように一気に形作られるのか。
ダウ90000蓮見の「世界を変える30歳未満」とかもその一例だと思います。現に彼らがやってる演劇とコントの中間であり、YouTubeでメンバー各自が動画の企画・編集を行っているっていうのがまさに第8のパターンだと思うので。
今は彼らが非・大手事務所だから、という理由づけがなされてしまってる部分はありますが、これからどんどん大手の権力が削がれていくことで独立的な動きは増えるでしょう。ネタをやりたい芸人は劇場のある会社に残るでしょうが、ミュージシャンや俳優、アイドルがどんどん自由に動けるようになり、そのパワーを取り込み、職種を超えてシームレスに動く芸人も続々出てくると思います。それでもテレビがやりたい人はテレビに残る、そこが分岐点になりそうです。
私はテレビ憧れから入って今ではM-1には夢中ですが、上の世代ほどメディアへの執着心がなく、新しいカルチャーにも興味があるので7.5世代になりそうです。上下の橋渡しを主に担う予定です。
めちゃくちゃ無難な結論に聞こえますかね???
全てをおさらいして具体的に想像すると!
M-1をはじめ! 今の有名お笑い番組が2、3年で終わったりサブスクに移行したりして!
全てから解き放たれたヨネダ2000と!
全てを取り戻した能年玲奈が!
U-NEXTで初コラボ!!大号泣!!
国会議事堂で24時間かくれんぼ!!
これくらいになっちゃうよって話!
乞うご期待!!!
髙比良くるま
写真・北原千恵美