【第4回】「緊急連絡先を書いてください」 ある男の物語 とある壁の片隅に、ある男が書いた文を見つけた。それを読んで、涙が止まらなかった。 「父さんと僕を置いて母さんが家を出た日。僕はその日、母さんが去ってしまうと気づいていた。一生懸命寝たふりをして、母さんがいなくなった後、声を殺して泣いたんだ。涙を流しながらためらう母さんを引き留めなかったのは、自分の人生を生きてほしいと思ったから。幸せになってほしかったから。軍隊生活を送る僕に、母さんは手紙を送ってくれたね。たまらなく会いたくなって電話をすると、母さんは ...