試し読み|BTSのVも読んだ!話題の韓国エッセイ『家にいるのに家に帰りたい』②

“自分を愛おしく、抱きしめたくなる”自己肯定感を高めてくれると話題のエッセイ『家にいるのに家に帰りたい』。著者のクォン・ラビンさんが綴る言葉は、不安やとまどい、どうにもできないさびしさ、愛することの痛みと幸福、たとえようのない感情にそっと寄り添ってくれます。今回は特別に、CHAPTER 4「わたしたちはふたたび恋をする」より一部抜粋をお届けします。

つらい日々をただ受けいれているだけのあなたへ

ベッドに寝ころび
スマートフォンにさわるとき

「ゆとり」とは、小さなすき間のようなもの。
ベッドに寝ころび空想にふける時間、
愛する人に会う時間、
一日を終えておいしいごはんとともに
一杯のお酒を飲む瞬間。
それらすべてが「ゆとり」だ。

そのすき間は、自分の心のありようによって
大きくなったり小さくなったり。
「そんなゆとりはない」と言いはるわたしは、
「すき間は大きくあるべき」と思い込んでいるのかも。

願い

どうかわたしが幸せでありますように。
愛する人たちの幸福も願うけど、
わたしはわたしが一番幸せでいたいと思う。

 

自分を探す道

ある人が言った。「あなたの文章には、嫌いなものを好きにさせる力がある。一文一文に共感を呼びおこす力がある」と。シンプルだけど、決して軽くない文章。わたしはずっと、そんな文をつむぎたい。収入にこだわるつもりもはないけれど、暮らしは日々ずしりと肩にのしかかる。やりたいのは言葉を生み出すこと。でも、そのためには食べていくお金も必要だ。

文章がとびぬけて上手いとは思わない。もっと才能あふれる人はたくさんいるから。だけど、書くことを愛する心では、負けないつもり。そのためか、誰かが軽く投げたささいな言葉に、敏感に反応してしまうこともある。わたしはいま、ぐらぐら揺れる心の上に立ち、必死にバランスを取ろうと耐えている。

自問をくり返し、最後に浮かんだ問いは、「自分は何者か?」「目指す究極の目標は何か?」だった。わたしにとって書くことは、自分を探し求める道のりだった。それは、わたしだけではないだろう。
青春時代に悩む人、人生の成熟期を迎える人、それぞれがきっと自分を探す道の途中にいるはずだ。

(イラスト チョンオ)

本書の続編『家にいるのに“やっぱり”家に帰りたい』がコレカラにて連載中!

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たちまち5万部突破した話題の韓国エッセイ

『家にいるのに家に帰りたい』

クォン・ラビン

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著者プロフィール

クォン・ラビン
1994年、韓国生まれ。9歳のときに両親が離婚。そのことがきっかけで、世間では「あたりまえ」と思われている多くのことに疑問を持ちはじめる。2020年、自分と同じような思いを抱える読者に寄りそう言葉を届けたいと、デビュー作となる『家にいるのに家に帰りたい』(&books/辰巳出版)を刊行。

永遠なる紫の月——あなたはきっと、わたしとこの言葉たちが好きになる。

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桑畑優香
翻訳家、ライター。早稲田大学第一文学部卒業。延世大学語学堂、ソウル大学政治学科で学ぶ。「ニュースステーション」のディレクターを経てフリーに。多くの媒体に韓国エンターテインメント関連記事を寄稿。主な翻訳書に『BTSを読む』(柏書房)、『BTSとARMY』(イースト・プレス)、『BTSオン・ザ・ロード』(玄光社)、『家にいるのに家に帰りたい』『それぞれのうしろ姿』(&books/辰巳出版)ほか多数。

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