家にいるのに"やっぱり"家に帰りたい【第8回】 あなたは海、宇宙、あるいはそれ以上|クォン・ラビン 桑畑優香 訳

いまいる場所になじむことができず、不安やとまどいを感じると、心やすまる居心地のいい家に帰りたくなる。
自分を守ってくれる温もりあふれる人と空間を誰もが必要としているのだ。
わたしが綴る言葉たちが、あなたのあたたかい避難場所となり、心と体がゆっくり休まりますように。――クォン・ラビン

【第8回】あなたは海、宇宙、あるいはそれ以上

 

文とことばと本

生きるのは、どうしてこんなにつらいの?

そう思う瞬間がある。

逆に、こんなに幸せでもいいの?

そんな瞬間も訪れるはず。

 

わたしが進む道なき道は絶対に間違っていないと信じれば、きっとそれが一番の近道になる。

 

「心配しないで」

「大丈夫」

「すべてうまくいくから」

「がんばっているね」

こんなありふれたことばに癒される理由は、誰もが救いを求めているからだ。

誰かが手をさしのべて、誰かが「大丈夫だよ」と励ましてくれたら。

そう願いながら、ありふれたことばに救いを求めているからだ。

 

不安に一人で立ち向かい、前に進むわたしに勇気を与えてくれる、誰かのあたたかい一言。

そのことばを信じて、わたしはまた、前に進むのだ。

 

ありふれた一言が、時にはわたしを救ってくれる。文、ことば、本。そのすべてが、わたしを救う力。

 

 

あなたは海、宇宙、あるいはそれ以上

青い海を船が横切っても、海が傷つくことはない。

 

人生もそれと同じ。

困難やあらゆる逆境、大きな不幸が訪れても、人生が傷つくことはない。

海のように大きな幸せが、人生を満たしているのだから。

 

一瞬のことで、人生の羅針盤を見失わないで。

 

 

 

父が教えてくれた言葉たち

あたたかいご飯を食べなさい。

つめたいご飯ばかり食べていると、それに慣れてしまう。そして、つらいことも増えていく。

 

すこし気難しい態度をとりなさい。

軽く見られないように。

 

価値があるものを他の人と分け合うのも良いけれど、まずは自分を大切に。

人生は自己中心的でもかまわない。誰かがあなたを気遣ってくれるのを待つ必要はない。

 

愛するときは熱く、別れる時は冷たく。

後悔や未練がないように。自分のためにも、一瞬に全力を尽くしなさい。

 

他人の悪口や噂を言ってはいけない。

嫌われていることと愛されていることを、人は本能的に感じ取る。悪口を言っても気づかないと思うのは大間違い。吐いた言葉は、ブーメランのように自分に返ってくる。

 

善き人であれ。真実を語る人であれ。

善意は善意を呼び、ちっぽけなことたちが世の中を変えていく。あなたの小さな行動と言葉にも、世界を変える力があることを、決して忘れないで。

 

できるだけ笑顔で、きちんとした服装を心がけて。チャンスは、いつどの瞬間にやってくるかわからない。常に準備をすることが大切。

 

善と悪の違いを見極められる人になりなさい。

目は心の窓というのは真実だ。悪意を感じたら、その人から離れるほうがいい。それは、あなたの人生経験が発する警告だから。

 

愛しなさい。

人生で、もっとも美しい思い出を残してくれるのは、愛だから。

 

日記を書き、写真をたくさん撮りなさい。

時が経つと、忘れたくなかった素晴らしい瞬間さえ、あいまいになってしまうから。

 

苦しいからといって、やみくもに他人にすがってはいけない。

弱みにつけこむ悪意に踊らされてしまうから。

 

ひとりぼっちの時間に慣れなさい。

寂しいからといって、誰かに会うのではなく。

すべての健全な人間関係は、ひとりの時間に自分の軸を磨くことからはじまる。

ひとりぼっちでも平気でいれば、良い人は自然とあなたのところにやってくる。

 

力尽きても、自分の命を絶つことを考えてはいけない。

人生をあきらめたくなる瞬間は誰にでもあるけれど、漆黒の夜は永遠には続かない。

その瞬間を乗り超えれば、必ず日はまた昇るから。

 

あなたには、価値がある。

あなたは、愛されるべき存在だ。

あなたは、何人も、あなた自身でさえも、軽んじてはいけない存在だ。

 

 

 

(イラスト チョンオ)

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著者プロフィール

クォン・ラビン
1994年、韓国生まれ。9歳のときに両親が離婚。そのことがきっかけで、世間では「あたりまえ」と思われている多くのことに疑問を持ちはじめる。2020年、自分と同じような思いを抱える読者に寄りそう言葉を届けたいと、デビュー作となる『家にいるのに家に帰りたい』(&books/辰巳出版)を刊行。

永遠なる紫の月——あなたはきっと、わたしとこの言葉たちが好きになる。

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桑畑優香
翻訳家、ライター。早稲田大学第一文学部卒業。延世大学語学堂、ソウル大学政治学科で学ぶ。「ニュースステーション」のディレクターを経てフリーに。多くの媒体に韓国エンターテインメント関連記事を寄稿。主な翻訳書に『BTSを読む』(柏書房)、『BTSとARMY』(イースト・プレス)、『BTSオン・ザ・ロード』(玄光社)、『家にいるのに家に帰りたい』『それぞれのうしろ姿』(&books/辰巳出版)ほか多数。

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-家にいるのに“やっぱり”家に帰りたい, 連載