試し読み|BTSのVも読んだ!話題の韓国エッセイ『家にいるのに家に帰りたい』④

“自分を愛おしく、抱きしめたくなる”自己肯定感を高めてくれると話題のエッセイ『家にいるのに家に帰りたい』。著者のクォン・ラビンさんが綴る言葉は、不安やとまどい、どうにもできないさびしさ、愛することの痛みと幸福、たとえようのない感情にそっと寄り添ってくれます。今回は特別に、CHAPTER 4「わたしたちはふたたび恋をする」より一部抜粋をお届けします。

わたしたちはふたたび恋をする

あなたにとってわたしは

あなたにとってわたしは、
どんな存在だったのか。
わたしにとってあなたは、
奇跡のように訪れた人生の春だった。

星を描く人

あなたはたぶん、夜空に星を描く人。夜明けの青白い空に日が昇ると、彩られていた星々はすぐに見えなくなるけれど、昼の光のなかでときおり見える星もある。あなたは、そんな星を描く人。だからこんなにもまばゆく、きらきらしている。

あなたをずっと太陽みたいだと思っていた。でも、ひんやりした手を握ったとき、わかった。手が冷たいのは、漆黒の空に星を描くから。高層ビルから眺める夜景に息をのみ、涙がこぼれそうになった。あなたが空に描いた星と地上にちりばめられた星が、いっせいに輝き、瞬きはじめたから。

いつか、わたしの星がきらめきを失ったら、あなたは光を与えてまた輝かせようとするだろう。わたしは、そんなあなたの手を握り、温もりを分けてあげる。あなたは気づいているのかな。わたしに光をくれるその瞬間、あなたの瞳は夜空の星より明るい光を放つことを。みんなは知っているのかな。星を描くあなたの手が冷たいということを。

 

みかん半分の愛

みかんを一緒に食べていて、
その果肉に愛がつまっていると気づいた。

ひとつのみかんを半分に分けたとき、
大きいほうをためらいなく
あなたの口にいれることができるから。
これが愛というものだと気づいた。

 

あたりまえの愛をあなたに

魚は自然に水のなかを泳ぎ、鳥は広い空を飛ぶ。
そんなあたりまえのことと同じように、人はごく自然に愛し合う。

死ぬほど憎み、別れの痛みに打ちひしがれても、わたしたちはふたたび誰かと恋に落ちる。心にたくさん傷を負い、すべての人を疑っても、人に癒やされて立ち直る。

人間は弱くて強い。だから、また傷つくかもしれないのに、今日は悲しみを叫んでいても、明日に向かって恋をする。わたしたちは結局、ふたたび誰かを愛してしまう。

(イラスト チョンオ)

本書の続編『家にいるのに“やっぱり”家に帰りたい』がコレカラにて連載中!

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『家にいるのに家に帰りたい』

クォン・ラビン

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著者プロフィール

クォン・ラビン
1994年、韓国生まれ。9歳のときに両親が離婚。そのことがきっかけで、世間では「あたりまえ」と思われている多くのことに疑問を持ちはじめる。2020年、自分と同じような思いを抱える読者に寄りそう言葉を届けたいと、デビュー作となる『家にいるのに家に帰りたい』(&books/辰巳出版)を刊行。

永遠なる紫の月——あなたはきっと、わたしとこの言葉たちが好きになる。

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桑畑優香
翻訳家、ライター。早稲田大学第一文学部卒業。延世大学語学堂、ソウル大学政治学科で学ぶ。「ニュースステーション」のディレクターを経てフリーに。多くの媒体に韓国エンターテインメント関連記事を寄稿。主な翻訳書に『BTSを読む』(柏書房)、『BTSとARMY』(イースト・プレス)、『BTSオン・ザ・ロード』(玄光社)、『家にいるのに家に帰りたい』『それぞれのうしろ姿』(&books/辰巳出版)ほか多数。

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