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マグラブ【第6回】朝日はしみるなぁ│野性爆弾 くっきー!

2023年3月10日

鬼才「くっきー!」による初の小説。思春期全開JKの、どこかおかしい、たぶんおかしい青春ラブストーリー。

【第6回】朝日はしみるなぁ

自転車を漕いで向かったのは問題の救急車の場所。
じいちゃんがゾンビ化して滞りなく救急隊員たちを襲ったあの場所。

そこにじいちゃんがまだいれば、殺して天国に送ってあげられる。
ゾンビ状態からじいちゃんを解放してあげられる。

じいちゃんのことを思うと、怖さなんて1ミリも、1ミクロンもありませんでした。

しばらく自転車を漕ぎ、電動のバッテリーが残りわずかを表示する頃、ばくは現場に到着しました。

心配です……。

帰りの自転車のバッテリーが切れないか。バッテリーが切れた電動自転車って、ジェロムレバンナのパンチくらい激オモなんすよね

てか、います、います。大量のゾンビがいます、います。

おやおや。

その中にじいちゃんゾンビを発見。ずっとここにいたんだ。そして、まさかの白衣ゾンビもいるじゃありませんか。

ラッキーなことなんですが、僕はどことなく残念でした……。この手の話って、苦労して悩んで、果てしない旅の末に、じいちゃんを殺す、もしくは因縁の白衣ゾンビを殺すってのが、ラストっぽいじゃないですか?

なのに、もう二体とも揃っちゃってるし。なんとなく壮大な冒険になるだろうなと、荷物もいっぱい持ってきたのに。わざわざ風呂まで入ったのに。

マジ、これじゃ普段とたいして変わんねーし!

せめて白衣ゾンビが遠くに移動するまで、お茶でもして待ってようかな。
あっ、財布持ってきてないや。

なんとなく町全体の人々がゾンビ化していて、店もめちゃくちゃで……って感じをイメージしていたから、財布を持つという概念がぶっ飛んでましたよ。

てか、普通に店やってるなぁ。まぁ、しょうがないか……。

やることやって、ちゃちゃっと家帰って、そうだな、オムライスでも作って腹いっぱいで寝るか。

僕ねぇ、こう見えて料理がけっこう得意なんですよ。得意料理はペペロンチーノですね。にんにく入れて唐辛子とオリーブオイルだけじゃん、なんて思ってるでしょう?

意外とシビアな料理なんすよ。パスタの絶妙な湯がき加減と塩のバランス。機会があればご馳走したいっすけどねぇ。

やっぱ今日は、ペペロンチーノにしよーっと。よし、じゃあ、とっととすましちまおうか。

まずは、じいちゃんを仕留めてあげましょうねぇー。警察さんからお借りしている銃をかまえましてぇー。

すると、じいちゃんゾンビと僕は目が合いました。

僕は『バイバイ』といいながら、じいちゃんに4発の玉をぶち込み天国へ送ってあげました。

一見、4発って多いとお思いでしょう? いかんせん銃に慣れてないもんで、そりゃぁミスりますわね。大いにはずしますわね。

1発目は右の顎と首の間あたり。2発目は鼻と上唇の間ですね。惜しかったんです。もうちょい上でした。慣れてきたんだと調子こいて、3発目なんてとことん大ズレ。

嘘みたいな話なんですけど、なぜか右の膝……頭を狙ってんのに、膝ってことありますかね? 距離? じいちゃんと僕の距離ですか?

1メートルくらいかな。

とことんセンスのない男だなぁと思います。でも、その3発目のおかげで、じいちゃんは膝から崩れてくれまして、4発目はしっかり狙えましたよ。もうデコに銃の先をくっつけました。俗に言うはずしようのない状態ですな。

もうあとは、イージーでござんしょ。人差し指をちょいと動かすだけでパキュンてなもんです。そんで、引き金を引いたんですよ。

耳でした……。

左の耳。

うそでしょっ(怒)。

どうなってんの、これっ(怒)。

デコに銃の先をつけて引き金引いたら、左耳っ!?
ありますかね、そんなことぉ?

結局、弾も切れまして銃の持つところぉ……グリップぅ?って、言うんですかね。それでじいちゃんの頭をゴッスンゴッスンとぶっ叩いて、ご苦労さんって感じです。

『銃、まじムジぃー』

まぁ結果ぁ? じいちゃんを天国に送ってあげられたんで良かったですけどぉ。問題はもう一体の方なんすけど。そうそう大ボスなのかな?

白衣のゾンビ野郎ですよ。そもそもの元凶はコイツだと思うんですよね。こんなヤツ、ここでぶっ叩いてもいいんですけど、それじゃ、なんでゾンビがバーっとぉ、なんか増えてーみたいな。その原因がねぇ、まぁー解明できないと思うんすよねぇ。

そもそも、こいつがなぜゾンビ化したのか、こいつからゾンビが始まりなのか、それともコイツ自体、誰かに噛まれてこうなったのか……?

ウイルスか? 地球外生物か?

てかぁ……。

それって、僕が解明しなきゃダメなんかなぁ……。

超絶に、ブリバリに、めんどくせーなぁ……。

ダリィーし、やめたぁー。キリないもん。そんなん調べ出したら永遠だもん。

そういうのはプロがやったほうがいいし。海外の動ける系の俳優さんとかが映画でやることを僕がやる必要一切ないし、てか、出来るわけねーし。すごい科学者とかがやりゃーいいし。政治家とか偏差値すごい人がやりゃーいいし。

そうだよ。東大生がやりゃーいいじゃん。おまかせー。

へへへ。

僕は白衣ゾンビの頭を銃のグリップ(?)でゴッスンゴッスンぶっ叩き、ぶっ壊してやりました。じいちゃんをやったあとなので手首がしんどく、なおかつ、じいちゃんよりコイツのゾンビ化が早かったせいか、気持ち頭がカタくって少々時間がかかりましたけど、トドメはさせました。

これでゾンビと僕との因縁は解決いたしました。結構あっさりといけてよかったなぁ。

おつかれしたぁー。

へへへ。

気がつけばもう朝日が昇っています。じいちゃんを自らの手で送ったその日に……。

徹夜明けの目に……朝日はしみるなぁ。

(つづく)

くっきー!

1976年3月12日生まれ、滋賀県出身。 日本のお笑い芸人。 吉本興業所属コンビ・野性爆弾として活動。 ネタ作りからコントの小道具まで全て自身が手掛けている。

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(イラスト ア~ミ~)

連載一覧

  • 第1回 腹へりマウスホーン
  • 第2回 牡蠣とマーク・ボラン
  • 第3回 こっち側の腹減りマウスホーン
  • 第4回 出来立てクレイジー彼女
  • 第5回 復讐の白衣ゾンビ
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